イタリア各地にある国立音楽院に留学して、本場で古楽を学びたい・オペラを学びたいと思ったときに、音楽院入学に年齢制限が設けられているのかどうかは重要なチェック項目ですよね!
働きながら留学資金を貯めているうちに、微妙な年齢になっちゃったんだけど……
という方もご安心ください!
通常、イタリアの音楽院入学に年齢制限は設けられていません。
本稿では2016年からヴェネツィアのベネデット・マルチェッロ音楽院に通う筆者が、音楽院内部の雰囲気が伝わるようにご案内していきたいと思います。
イタリアの音楽院にはふつう年齢制限はないけれど、気を付けること
通常は、イタリアの国立音楽院に年齢制限はありません。
2016年、筆者はヴェネツィアの音楽院以外にも、ノヴァーラ、ヴェローナ、ボローニャの音楽院を視野に入れて、どの音楽院を受験するか考えていました(日本からイタリア文化会館を通して正規で自費留学する場合、併願できなかったので受験校を1つにしぼる必要がありました)。
結局、古楽科の器楽コースの充実度や担当教授との相性からヴェネツィアの音楽院に決定しましたが、ほか3つの音楽院にも年齢制限はありませんでした。
でも注意していただきたいことがいくつかあります。
- ひんぱんにシステムが変わる
- システム変更の通達はいつも直前
- イタリア各街の音楽院は国立でも、それぞれの制度を持っている
これらの内容は入学前だけでなく、入学後もずっと気を付けておいてね!
イタリアの音楽院の制度は毎年のように変わる!?
イタリアの音楽院に関する制度は毎年のように変わります。
たとえば2015年までは、通称「受験ビザ」を作ってイタリア現地に入り、入試に合格したら「受験ビザ」を「就学ビザ」に書き換えられるシステムでした。
しかし筆者が受験した2016年、直前にイタリア文化会館から制度変更の通達がありました。
受験ビザは廃止され、日本人はビザ無しでイタリアに渡り、合格した後に帰国して就学ビザを申請しなおす形式に変更されました。
入学後も毎年カリキュラムの見直しがあります。
また2019年度からは「プレ・アッカデミコ」コースが2種類に分化しました。
音楽院制度変更に関するイタリア政府の通達が遅い
毎年変更があるにもかかわらず、政府からの正式な通達がギリギリに来ます。
受験前はいつもイタリア文化会館から、
「イタリア政府からの正式な通達がまだだから」
と言われていましたが、現在は学校の事務局(セグレテリア)から
「ミニステーロ(大臣)がまだ何も言ってこないから私たちも分からない」
と言われています・・・。
受験準備を進めたあとで年齢制限制度がいきなりできたりしたら、シャレにならないぞ!!
と思われるかもしれませんが、この「翻弄されまくる感」はイタリアを留学先に選んだ以上つきものです(苦笑)
イタリア在住後もつねに繰り返されますので、いさぎよく「こんなものさ!!」とあきらめましょう。
しかし北イタリアに住んでみたところ、こちらの人たちは意外とあきらめが悪く、毎回ちゃんと怒っています・・・
イタリア各地の音楽院はそれぞれ独自性をもっている
イタリア全土には、日本の国立大学と同じぐらいたくさんの国立音楽院があります。
さらに、ミラノ市立音楽院など国立ではない公立音楽院も存在しています。
そしてこれらの音楽院はそれぞれに異なる制度を持っています。
国からの通達に縛られる一方で、各音楽院で自由に設定できる部分もあるようです。
たとえばヴェネツィアの音楽院では、日本の音大で取得済みの単位を認めてもらうのに100ユーロほどの安くない手数料がかかります。
しかしパドヴァの音楽院はこんな手数料は取らないのだとか・・・
ちなみにヴェネツィアの音楽院も、音楽関係の単位認定だけは手数料をとるのに、「英語」など音楽と関係ない科目に関しては無料でおこなってくれます。
音楽院の教授には異動があるし、毎年のように制度が変更になるので、先生たちも翻弄されている側だと思ってあげてね。
あまり頼りすぎたらかわいそうだよ!
ヴェネツィアの音楽院に通う学生の年齢層
ヴェネツィアの音楽院では、下は5~6歳の小さな子から、上は60代の方まで様々な年齢層の学生が学んでいます。
またコースによって、多少年齢の傾向があるように見えます。
- 器楽より声楽の方が若い人が多い
- 古楽科は平均年齢が高い
以下、もう少し詳しく書いてみます。
声楽科の平均年齢は若い?
やはり体力勝負のオペラ歌手、平均年齢が下がるのでしょうか。
とはいえ、3分の1程度を中国からの留学生が占めるので、若いといっても自国で大学や大学院を卒業した年齢の方も多いです。
またバロック声楽科は、普通の声楽を卒業したあとに劇場で合唱の仕事をしながら通う学生などもいて、平均年齢があがる傾向にあります。
古楽科は平均年齢が高い
古楽の良さが分かるのにある程度年齢が必要なのか、モダン楽器を習得したあとに移ってくるからなのか、明確な理由は分かりませんが平均年齢が高い傾向にあります。
たとえばチェンバロ科だと――
- 60代のイタリア人男性
20代でオルガン科を卒業し教会でオルガン奏者をしていたが、チェンバロ科に登録した。 - 40歳前半のロシア人女性
若い頃にピアノ科を卒業し、イタリア人と結婚し3人の男の子を授かるが、小さな子供たちと一緒に音楽院に通っている。 - 20代後半のイタリア人女性
バロックヴァイオリン科に通っていたが、情熱がチェンバロに移ったためチェンバロ科に入学。 - 20代前半のフランス人女性
この方だけはプレ・アッカデミコ・コースからずっとヴェネツィア音楽院でチェンバロを学んでいる。
そして30代日本人の筆者――というわけで、年齢・国籍がバラエティに富んだ感じになっております。
イタリアの音楽院には小さな子供も通う
上記で説明したロシア人女性は、お子さんと一緒に音楽院に通っています。
音楽院のプレ・アッカデミコ・コースでは、実技試験に合格すれば小学校低学年の子供も学ぶことができます。
以前は学部入学前にプレ・アッカデミコ・コースに入ってくる大学生ぐらいの年齢の若者も、小学生も、趣味の大人も同じ学費だったのですが、2019年度から制度が変わって、学部入学を目指すプロ志向のためのコースのみ学費が高くなりました・・・。
学士過程でバロック声楽を学びつつ、プレ・アッカデミコ・コースでチェンバロを学んでいた筆者は問答無用で「学部入学を目指すプロ志向のためのコース」に振り分けられてしまいました。
学費が2倍近くに跳ね上がったことは言うまでもない・・・
イタリア音楽院留学の第一歩はイタリア文化会館から
年齢制限もなさそうだし、イタリアの音楽院留学を目指してみたいな。
まず何から始めればいいんだろう?
という方はイタリア外務省の機関であるイタリア文化会館にアクセスしましょう。
EU圏内の国に国籍や住民票を所持していない場合は、通常イタリア文化会館を通して留学手続きをおこなうことになります。
筆者もイタリア文化会館主催の「留学説明会」に参加したのが、留学の第一歩でした。
でもイタリア語の勉強に関しては、独学で進めておくに越したことはないよ! 留学を考え始めたら、1日でも早くはじめよう。
すでにイタリア在住ならEU圏内の学生のように直接願書を申請
イタリア国内にレジデンツァ(住民票)を持っていて、語学証明もB2以上のレベルを提出できる場合は、日本のイタリア文化会館を通さずに受験できることが多いようです。
一方で、EU圏内の国に国籍や住民票を所持していなくても、イタリア国内の語学学校に通っていて就学ビザを持っている場合、音楽院によっては日本のイタリア文化会館を通さずに受験できることもあります。
イタリア語の日常会話力が必須にはなりますが、音楽院の事務局(セグレテリア)に電話かメールで質問してみましょう。
イタリアで生活できるか不安なときは……
イタリアって、いい加減な気質の国ってイメージがあったんだけど、ひんぱんに制度変更があって通達も遅いなんて聞くと、余計にイタリアでやっていけるか心配になるなぁ・・・
という方は、とりあえずお試しで1週間から3ヶ月未満の語学留学をしてみると、イタリア暮らしの雰囲気が分かって安心だと思います。
同じイタリアといっても南の方は「いい加減度」が上がりますが、北イタリアは結構時間も守りますよ!
でも「自分は日本人の中でもきっちりしている」自覚のある人は、オーストリアに近い北の地域がおすすめです。
気質も少しドイツ寄りになっているそうです。
語学学校は英語が通じますので、イタリア語に不安があっても申し込めます。
また、School With
などエージェントを通すと、日本語で申し込みできるので簡単です。
留学エージェントは語学学校から紹介料を受け取っているので、学生側は無料で利用できます。
最初は無料の個別相談がおすすめ
School With の個別相談を利用する場合を例にとって説明します。
まずは公式サイトにアクセス
School With にアクセスします。
「無料で相談する」をクリック
「個別面談を予約する」をクリック
必要事項を入力して、個別相談してみましょう!
あとがき:イタリアの音楽院にはふつう年齢制限はないので本場で学んでみよう
というわけで、今からでも遅くありません!
思い立った今日が一番若いのですから、興味のある方は行動してみましょう♪
ふだんイタリア語で生活していると、イタリア語の歌詞を歌うときに、意味を考えなくても自然に感情をこめている自分に気が付くと思います。
また劇場でイタリアオペラを観るときも、オペラの登場人物たちがより身近に感じられておもしろいですよ。
レチタティーヴォなど意外なほど普通に会話していて、「こんな感じだったのか~」と新たな発見があります。
と言っても今現在、正社員で働いている方は、退職して留学するなんて大きな決断になると思います。
『退職して留学して後悔しないのか?』について掘り下げた記事がありますので、気になる方はちょっと目を通してみてくださいね。
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