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イタリアの音楽院カリキュラム。バロック声楽科3年間の必修科目一覧

イタリアの音楽院
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イタリアの音楽院に興味はあるけれど、どんな授業が必修なんだろう?

という疑問に答えます。筆者が通っているヴェネツィア音楽院の実際の授業カリキュラムを日本語に訳して載せています

トップ画像は音楽院の最上階から撮った写真です。ヴェネツィア音楽院内部の様子をYoutubeに載せています。学校内をのぞいてみたい方はどうぞ!

イタリアの国立音楽院について

イタリアは北から南まで各都市に国立音楽院があります。
筆者が通っているのは、ヴェネツィアにあるベネデット・マルチェッロ音楽院。
古楽科でバロック声楽を専攻しています

音楽院は、レベルⅠ・レベルⅡ・マスターに分かれており、それぞれ学士・修士・博士課程に相当します。マスターは設置されていない学科も多いですね。

筆者はレベルⅠから学んでいるので、当記事で紹介するのは学士過程のカリキュラムです。

イタリアの音楽院カリキュラム表の見方

  • ピンクの蛍光ペンを引いた科目は個人レッスン、水色の蛍光ペンはグループ実技科目となっています。
  • 時間数は、年間の授業時間数で単位は「時間」です。
  • 試験を行わず出席日数で単位が認定される科目は、「試験」欄が空欄になっています。

科目名にリンクが貼ってあるときは、クリックしていただくと授業内容と試験についての詳しい記事に移動します。

イタリアの音楽院、1年次のカリキュラム

 科目名時間数試験
基礎科目ソルフェージュ20h 
音楽理論の基礎30h筆記
記譜法の歴史14h 
音楽史Ⅰ45h口頭
チェンバロ演習Ⅰ18h実技
専攻科目バロック声楽Ⅰ36h実技
通奏低音演習Ⅰ18h 
古楽アンサンブルⅠ20h 
関連科目和声法Ⅰ60h筆記
グレゴリオ聖歌Ⅰ18h口頭
合唱Ⅰ24h 
その他他授業への協力(※1)12h 
英語20h 
課外活動(※2) (2回) 
自由選択 (6単位必要)(※3)  

※1、「他授業への協力」とは

※1、「他授業への協力」とは、ほかの楽器の個人レッスンにお手伝いとして参加することです。
具体的には、

  • チェンバロ科やオルガン科の学生が、声楽やリコーダー、ヴァイオリンなどのソロ楽器の伴奏をする。
  • 声楽などソロ楽器専攻の学生が、チェンバロ科やオルガン科の学生のために、通奏低音のレッスンでメロディラインを演奏する。

などの活動を行います。

※2、「課外活動」とは

※2、「課外活動」とは学校外で、マスタークラスに参加したり、オペラやコンサートを行うと加算される単位です。
単位認定は専攻実技の担当教授がおこないますので、例えば古楽科の学生がゴンドラでカンツォーネを歌うバイトをするなど、専攻と関係ない演奏をしても認定されません
通常はこの単位が取得できるように、担当教授が出演できるコンサートをあっせんしてくれるなどして、取りはからって下さいます。

(しかし落第させたい学生がいる場合は、この単位を認定しないことで進級をはばむという教授の裏技も・・・)

※3、自由選択科目とは

※3自由選択科目では、必修以外の授業を自由に選択できます。
音楽院ではひんぱんに「プロジェクト」と名前のついた内部講習会やマスタークラスが開催されます。
こうしたプロジェクトは数日間集中して12時間ぐらい学び、2単位ほど取得できるものなので、多くの学生がこうしたプロジェクトで「自由選択科目」単位を取ります。

バッハのゴルトベルク変奏曲に関する集中講義

バッハのゴルトベルク変奏曲に関する集中講義の様子

上の写真は管理人が参加した「ゴルトベルク変奏曲」の講習会の様子です。
こうしたプロジェクトには、学校外の人も参加することができます。


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イタリアの音楽院、2年次のカリキュラム

怒涛の2年次
科目数、試験数ともに増え、1年次と比べずっと忙しくなります。

 科目名時間数試験
基礎科目聴音40h筆記
文献調査の手法Ⅰ15h口頭
音楽史Ⅱ45h口頭
チェンバロ演習Ⅱ18h実技
専攻科目バロック声楽Ⅱ36h実技
声楽の歴史24h口頭
通奏低音演習Ⅱ18h提出物
音律の歴史12h 
通奏低音の歴史12h 
古楽アンサンブルⅡ20h 
対位法Ⅰ20h筆記
関連科目グレゴリオ聖歌Ⅱ18h口頭
合唱Ⅱ24h 
即興と装飾Ⅰ12h 
その他電子音楽情報論20h提出物
他授業への協力12h 
英語20h試験有
課外活動 (2回) 
自由選択(6単位必要)  

古楽ではない声楽科の学生は、2年次、3年次と和声法を続けて学びます。
古楽科の学生は、和声法の代わりに対位法が始まります。

管理人は和声法が大好きなので、自由選択科目として和声法を続けて学びました(もちろん必修の対位法と並行して)。
和声法の試験は筆記試験といっても五線譜に作曲する形式なので、言葉のハンディキャップがなく、単位を取りやすいのも自由選択科目で和声法を選んだ理由の1つです。

ただし和声法は、一般的に音大生に嫌われる科目だそうです・・・
すごくおもしろいのに・・・

イタリアの音楽院、3年次のカリキュラム

3年次は卒業論文を書く学生に考慮してか、科目数が一番少ないです。
実際は3年間で卒業せずに4年目も登録する学生が多いので、多くの学生が4年目に卒業論文を書いています。

 科目名時間数試験
基礎科目文献調査の手法Ⅱ15h口頭
音楽史Ⅲ30h口頭
専攻科目バロック声楽Ⅲ36h実技
多声音楽演習15h 
対位法Ⅱ20h筆記
関連科目即興と装飾Ⅱ12h 
舞台表現演習30h実技
その他課外活動(2回) 
自由選択(6単位必要)  

バロック声楽科のカリキュラムに、3年次になってようやく登場する「舞台表現演習」は、演出家の先生が演技の指導をして下さる授業です。

普通の声楽科では1年次から3年間学びます。
そして実際の演習だけでなく「舞台表現理論」という科目もあります。
つまり、週に2コマずつ演技に関する授業が3年間続くのです。

こうした違いから、声楽科のカリキュラムはオペラ歌手の育成を念頭に置いているのに対し、バロック声楽科ではバロック・オペラに出演する歌手の育成は想定されていないのだと感じます。

関連記事 バロックオペラ歌手になるには古楽科or声楽科どちらで学ぶべき?

イタリアの音楽院必修科目まとめ

音楽院の3年過程の授業について、イメージが湧いてきたと思います。
楽しそうでしょ?(笑)

お気づきかと思いますが、イタリアの学校の試験は口頭試験が多いです。
イタリアに来たばかりの1年目は大変でした。
でもご安心ください。言葉はまじめに勉強していればどんどん上達します
管理人は3年次の音楽史の口頭試験では、30点満点中30点を取ることができました。
難しいのは最初のうちだけですよ!

イタリアの音楽院では、集団授業も生徒数が少ない授業が多く、教授と学生の距離が近く、しっかりと学べます。
先生たちは熱心で、疑問点は分かるまで徹底的に教えてくれます。

もちろんこれは管理人に見えている範囲だけのことではありますが、少なくともヴェネツィア音楽院で3年間過ごしていて、授業のレベルにはとても満足しています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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