音楽院の「バロック声楽」コース2年目の授業計画書と試験プログラム

タイトル画像「バロック声楽科2」バロック声楽
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ヴェネツィア音楽院のバロック声楽コース、2年目の授業内容と試験プログラムについて書きます。

1年目については「バロック声楽レッスン1年次の授業計画書と試験プログラム」に書いています。

また、ヴェネツィア音楽院のカリキュラムは実技以外にもたくさんの必修科目があります。
コース全体のカリキュラムについては、「バロック声楽科3年間の必修科目一覧」に書いています。

(今回もトップ画像はヴェネツィア音楽院の天井画です)

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バロック声楽レッスン2年次の授業内容

今回も、1年次の記事でご紹介したように、ヴェネツィア音楽院のWEBサイトに載っている授業計画書を載せます。

そして実際その通りレッスンが進められたのか見ていきます。

音楽院公式サイトの授業計画書

1年次は1600年代前半を中心に学びましたが、2年次は1600年代後半に移ります。

バロック声楽科2年目授業計画

 音楽院のWEBサイトではこのように、スタディ・プログラム(授業計画書)が公開されています。

ざっと翻訳してみるとテクニック面については――

1年次に学んだ発声テクニックを継続して深めていくと同時に、古楽演奏にふさわしい様式感を加えていくことが求められる――特にレチタティーヴォにおける声と言葉の関係、装飾をつけて歌うこと、アジリタをマスターすること、音域を広げることなどである。
古楽科の中に声種、成熟度の観点から見て適したほかの学生がいる場合は、デュエットの勉強を実現できることが望ましい。

といった内容が書かれています。

続いてレパートリーについては、

  • 17,18世紀の器楽つきソロ・カンタータ
    ローマ楽派(カリッシミ、ストラデッラ等)、ヴェネツィア楽派(ヴィヴァルディ、マルチェッロ、アルビノーニ等)、ナポリ楽派(スカルラッティ、ドゥランテ等)
  • 1700年代のオペラ
  • ダ・カーポ・アリアでバリエーションや装飾をつける勉強

と書かれています。

実際の授業内容は・・・

6割程度、計画書の内容を学んだと思います。

計画書の通り進めてたな~と思う点は――

  • 高音域の発声については重点的に見てもらった。
  • レチタティーヴォは確かにしぼられた。アリアよりよっぽど時間を割いた。
  • アジリタはまあまあ見てくれたけど、さほどではない。
    発声テクニックについては、高音域の音色を美しくすることにほとんどの時間を捧げたと思う。
  • 多声音楽についてはほかの授業(サンマルコ寺院の音楽監督の先生が担当しているコース)でたくさん学んだ。
  • ヴェネツィア音楽院だから当然かも知れないが、ヴェネツィア楽派に重点が置かれた。
  • ナポリ楽派のスカルラッティは学びました――難しかった・・・

逆に、計画書に書いてあるけど、これはやってないぞ?という内容です。

  • ダ・カーポ・アリアの装飾をどんなふうに書くかなんて習った覚えがないぞ。
    毎回自分で書いていって、それをそのまま歌っていただけでした。
  • ローマ学派はほとんどふれていない。

といった状況でした。

ダ・カーポ・アリアの装飾については、色んな先生が褒めて下さるけど指導は入れて下さらない――欲しいのは褒め言葉じゃなくてアドバイスなのに……と思っていましたが、声楽の先生に紹介された伴奏者の方が、素晴らしいアドバイスをして下さって感動しました。

チェンバロ、オルガン、バロック声楽という3つのディプロマを持っている方なのですが、1回の伴奏合わせですぐに私の音域や歌いやすい音型を把握して、装飾に関するアドバイスをして下さいました。
私が自分で考えた歌いにくいバリエーションを、さらっとカッコイイ、それでいて歌いやすい音型に直して下さって、めちゃくちゃ尊敬しました。

通奏低音奏者としての確かな和声感と、歌手としての声への鋭い洞察や知識の両方が合わさってこそできる技かなと思いました。

こんなMusicista(ミュージシャン)になりたい!と思えるような人に出会えて幸せでした。

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2年次の終了試験

年間計画書で定められているプログラム

試験内容についても、音楽院のWEBサイトにプログラムが載っています。
試験に関しては、完全にこのプログラムを順守して曲を選んでいます。

 

ヴェネツィア音楽院のバロック声楽科2年次試験プログラム

試験のプログラムについては、

  • ソロ・カンタータ(いくつかは器楽のオブリガード・パート付きが望ましい)
    ……学生が3曲用意し、試験官が2曲選ぶ。
  • 1600年代後半から1700年代のイタリアオペラから(できればレチタティーヴォと)アリア。ダ・カーポでは装飾をつけること。
    ……学生が3曲用意し、試験官が2曲選ぶ。
  • 室内楽かオペラからデュエット
    学生がこの1年間に勉強した中から1曲を選ぶ。
  • 新曲歌唱
    18世紀のシンプルな作品から現代印刷譜のもの。

と明記されています。

カンタータって1曲の中に2~3曲アリアが含まれているので、それを3つ用意するとなると、演奏時間が長いプログラムになって準備が大変でした。

実際に試験用に用意した曲

カンタータ

  • Giovanni Battista Bassani (1650circa-1716)
     “Ti lascio Eurilla”
  • Aressandro Scarlatti (1660-1725)
      “Ardo è ver per te d’amore”
  • Antonio Lotti (1667-1740)
      “Qual arde la fenice”

オペラアリア

  • Tomaso Albinoni (1671-1751)
    《Zenobia – Regina de’ Palmireni》Aria di Silvio 
     “Crudel, crudel, crudel” (aria)

  • Antonio Vivaldi (1678-1741)
    《L’Olimpiade》Aria e recitativo di Aminta
     “Fuggi, salvati Aminta” (recitativo)
     “Son qual per mare ignoto” (aria)

  • Georg Friedrich Händel (1685-1759)
    《Agrippina》 Aria e recitativo di Poppea
     “Piega pur del mio cor” (recitativo)
     “Bel piacere e godere fido amor” (aria)

デュエット

Claudio Monteverdi (1567-1643) 
   Romanesca “Ohimè dov’è il mio ben”

デュエットに関しては、「学年を通して学生が学んだものの中から選ぶ」と書かれているだけで年代の指定はありません。
バロック声楽の担当教授はモンテヴェルディを愛してやまない人なので、この曲を選んできたのでは・・・と思わずにいられません。
だって1曲だけ明らかに時代がずれてるじゃないですか……

試験曲についての所感

バッサーニのカンタータは、レチタティーヴォとアリアがはっきり分かれておらず、おもしろいです。
少し古いものなので、まだ定型化されていません。

スカルラッティとロッティのカンタータはどちらも音程が取りにくい曲なのであまりお勧めしません。
特にスカルラッティの “Ardo è ver per te d’amore”は、きれいな曲ですが、和声的に歌いにくい箇所があります。

なぜこうも歌いにくい曲ばかり選んでくれるのか先生に聞いたところ「単純でシンプルな曲は声の美しさだけで聴かせられる歌手が歌うもので、あなたみたいにやわらかく歌えない人は難しい曲で勝負するしかないのよ」とのことでした。

オペラアリアの中ではヴィヴァルディのL’Olimpiadeからのアミンタのアリアがかっこいいです。

バロックオペラによくある、荒れた海に浮かぶ小舟のように、という隠喩アリアです。
音域も広くて歌いやすい――というのも変な言い方ですが、高音も出てくるけど低音もしっかり下がるので、私の声には高止まりしているタイプの曲よりずっと歌いやすいので、気に入っていました。

聴き映えするタイプの曲なので、お勧めです。

ヘンデルの初期のオペラ、アグリッピーナからのアリアよりずっとかっこいい曲ですね……管理人は本来ヘンデルが一番好きな作曲家なのですが、ヘンデルのオペラアリアを選ぶのに、なぜわざわざアグリッピーナから持ってきたのか、といった感じの選曲でした。

リズムだけはおもしろい曲です。
和声的に興味深い点はあまりありませんが、歌ってみるとノリがよいので意外と楽しかったです。

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