オンブラ・マイ・フOmbra mai fù(ヘンデル《セルセ》より)歌詞と解説

「ヘンデルのラルゴ(オンブラマイフ)」とオペラ《セルセ》卒論-セルセ研究
この記事は約12分で読めます。

この記事では、「ヘンデルのラルゴ」もしくは「懐かしき木陰よ」の邦題で親しまれているオンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)について、歌詞の意味や対訳、発音の解説をしました。
また無料でダウンロードできる楽譜も紹介しています。

CHECK! オペラ《セルセ》のあらすじと解説は、以下のページに移動しました。

(このページのトップ画像の木が、「オンブラマイフ」の歌詞の中で主人公セルセがめでているプラタナスです。
  写真ACからにゃんとびえっちゃんさんによる写真をダウンロードさせていただきました)

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オペラの舞台で歌われるオンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)を試聴

ポーラ・ラスマッセン(メゾソプラノ)によるオンブラ・マイ・フの演奏です。

Serse: Ombra mai fu

こちらの映像はドレスデン音楽祭で演じられた、クリストフ・ルセ指揮によるオペラの舞台です。
DVD(台本、対訳、日本語による解説つき)がリリースされています。

オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)の歌詞の意味

それでは詞と対訳を見ていきましょう。

イタリア語の歌詞と読み方(カタカナは目安です)

Ombra mai fù (オンブラ マイ フ)
di vegetabile (ディ ヴェジェタービレ)
cara ed amabile (カーラ エダマービレ)
soave più. (ソアーヴェ ピウ)

イタリア語はほとんどローマ字読みが通用する上、母音の体系も英語やフランス語に比べ日本語に近いシンプルなものですが、U(ウ)の発音が日本語の共通語と異なります
舌の位置をオのときのように低めに取り、唇をやや突き出すようなイメージで発音しましょう。

歌詞全体の意味

歌詞全体の意味としては、

これ以上に優しく心地よく愛すべき木陰は今までになかった

という対訳になります。

詩の文法と逐語訳

対訳だけ読んでも、1つ1つの単語の意味が分からないと歌うときに表現しにくいですよね。

イタリア語の詩は4行に分かち書きしていますが、文法的には1文です。
つまり動詞は1つだけ――「fù」=essereという動詞の遠過去形です。
essereは英語のbe動詞、遠過去という概念は英語にはないのですが過去形の一種です。

fuの前のmaiは「決して~ない」という意味の副詞、英語のneverみたいなものです。

最初のOmbraは「影」。
詩なので単語の順番が自由なのですが、2行目以下はすべて主語Ombraを説明している単語です。

  • di(の/英語のof) vegetabile(植物)→植物の
  • cara(優しい) ed(と/英語のand) amabile(愛すべき) →優しく愛すべき
  • soave(心地よく)
  • più(以上、より多く)

レチタティーヴォの歌詞と対訳

オンブラ・マイ・フはオペラの中の1曲です。
ですからオーケストラによる前奏の前にレチタティーヴォがあります。
レチタティーヴォについても、歌詞と対訳だけ載せておきますね。

イタリア語の歌詞

Frondi tenere e belle del mio platano amato
per voi risplende il fato.
Tuoni, lampi e procelle
non v’oltraggino mai la cara pace,
né giunga a profanarvi austro rapace!

日本語訳

私の愛するプラタナスのやわらかく美しい葉よ
運命はお前たちのために輝いている。
雷鳴、いかづち、そして嵐も
決しておまえたちの美しい安らぎを侵すことなく、
貪欲な南風もお前たちを冒涜しに至ることはない。

このレチタティーヴォはオペラの冒頭、ペルシャ王セルセが、一本の美しいプラタナスの木陰をほめたたえて歌います。
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オペラ《セルセ》の中のオンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)

オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)はヘンデルが1738年に作曲し、ロンドンで初演されたオペラ《セルセ》の中の一曲です。

オペラ《セルセ》については以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方はご覧ください。

オンブラマイフは男性ソプラノ(カストラート)によって歌われた

古代ペルシャの王セルセを演じたのは、当時人気の男性ソプラノ歌手(カストラート)のカッファレッリです。
彼の音域は現代のメゾソプラノですが、バロック時代はまだメゾソプラノという声種区分がなかったので、当時のプログラムではソプラノと記載されています。

カッファレッリの肖像画

カッファレッリことガエターノ・マヨラーノ(1710-1783)

カッファレッリはファリネッリのライバルだと言われています。
でも二人の性格はまるで反対で、カッファレッリは気分屋で、感情の上下が激しく、色々なところでいざこざを起こすロックスタータイプだったそうです。

ファリネッリについては90年代に伝記映画が製作されましたね。


カストラート HDニューマスター&リニアPCMエディション [DVD]

 劇中ではヘンデルの作曲したオペラ・アリアをいくつも聴くことができます。
オンブラ・マイ・フは出てきませんが、どの曲もとても美しいです。

DVD/CDの宅配レンタル【TSUTAYA TV / TSUTAYA DISCAS】 で「カストラート Farinelli」のDVDをレンタルできます。
初回入会から30日間無料お試しできるそうです。

オンブラマイフはアリアではなく「アリオーゾ」

Ombra mai fùは、第一幕、第1場――つまりオペラの最初のシーンで歌われるアリオーゾです。

アリオーゾとは本来「アリアのような」という意味の形容詞です。
「レチタティーヴォ・アリオーゾ」として、「アリアのようなレチタティーヴォ」という言葉で使われていたのが、アリオーゾ単体で独立した呼び名になりました。

普通のアリアとどう違うかを簡単に書くと、バロックオペラのアリアは通常A-B-A’形式のダ・カーポ・アリアですから、ダ・カーポしないんだなと思って下さい!
ダ・カーポ・アリアだと途中のB部分では並行調に移調したり、主題や曲調が変わったりしますが、それがなくAの部分だけなので、短くシンプルになります。

実は「ラルゴ」じゃなくて「ラルゲット」

「ヘンデルのラルゴ」と呼ばれることもありますが、原曲の速度表示はラルゲット」です。
アレグロに対するアレグレットのように、-ettoがつくことでもとの形容詞の意味を緩和します。
ラルゲットはラルゴほどはゆったりしていない、ということです。

オンブラ・マイ・フはオペラの冒頭で歌われる

オーケストラによるシンフォニア(序曲)が終わるとすぐにセルセのレチタティーボ・アッコンパニャート(オーケストラ伴奏付きのレチタティーヴォ)が始まり、アリオーゾOmbra mai fùが歌われます。

真打であるプリモ・ウォーモが第一幕第1場から登場し歌うのは、バロックオペラとしては珍しいです。
バロック時代は、現代のように劇場のベルが鳴って序曲開始前に客席が静まり返っているというようなことはありませんでした。
むしろシンフォニアが開始のベル代わり、最初の登場人物のレチタティーヴォが始まるころにようやく客席のざわめきが静まってくるという様子だったそうです。

19世紀のオペラとはちょっと習慣の異なるバロックオペラについて、もっと詳しく知りたい方は以下の記事がおすすめです!

オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)の楽譜

ここからは、オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)を実際に演奏してみよう、歌ってみよう!のコーナーです。

オンブラマイフ(Ombra mai fù)の楽譜をダウンロードできるサイト

無料でオンブラマイフの楽譜をDLする

オンブラ・マイ・フを作曲したヘンデルは250年以上に亡くなっているので、エディションによってはパブリック・ドメインとして無料で利用することができます。

 上記はパブリック・ドメインの楽譜を多数ダウンロードできるサイトIMSLPです。

オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)はオペラ《セルセ》の中の一曲ですので、上記のリンクは《セルセ》の楽譜を集めたページです。

オーケストラの総譜、歌とピアノ伴奏だけのシンプルなヴォーカル譜、18世紀の手稿譜など多数揃っていますので、使いやすいものを選んでダウンロードしてみましょう!

例)オンブラマイフのオーケストラスコア(オペラ《セルセ》第一幕)

オンブラマイフ楽譜(オペラ《セルセ》第一幕)

オペラ《セルセ》第一幕第一場のオケ譜

オンブラマイフ楽譜(オペラ《セルセ》第一幕)

「クリュザンダー版」と呼ばれている19世紀のヘンデル全集の楽譜です。

有料サイトからオンブラマイフの楽譜をDLする

有料のサイトなら著作権の切れていない楽譜をダウンロードできます。
最近の印刷なので読みやすいことが多いです。

また、オンブラ・マイ・フのように声楽学習者が練習する曲に関しては、低声用、中声用、高声用とさまざまな調がそろっているのもメリットのひとつです。

ヤマハが運営する「ぷりんと楽譜」では1曲数百円からダウンロード購入できます。

ダウンロード 【Ombra Mai Fu】楽譜一覧ページ│ぷりんと楽譜

 曲名をクリック
   ↓
ダウンロードページで「SAMPLE」画像をクリック
   ↓
譜面が拡大される→調号からキーが分かります。

オンブラマイフ(Ombra mai fù)を含むイタリア古典歌曲集の楽譜

オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)を勉強する方は、おそらくほかの古典アリアも同時期に学ぶことと思います。

古楽を学んでいる管理人がおすすめしたいのは、ロマン派的解釈が書き込まれていない代わりに、装飾の一例が示されている「原曲に基づく新イタリア歌曲集です。


原曲に基づく 新イタリア歌曲集

しかし大変残念なことに現在は絶版になってしまいました。

今も昔も、声楽レッスンで使われているのは有名な全音版でしょう。

オンブラ・マイ・フの伴奏

チェンバロによるOmbra mai fùの伴奏です。
歌の練習にご利用ください。

Ombra mai fù オンブラマイフ:チェンバロ伴奏(A=415)楽譜,歌詞,和訳付Harpsichord Accompaniment / Karaoke

使った楽譜はオリジナルキー(ヘ長調)ですが、便宜的な古楽ピッチであるA=415(半音下げ)のチェンバロで弾いていますので、ホ長調になっています。

オンブラ・マイ・フを歌う時に注意すること

声楽を習い始めた初歩のころに必ず習うオンブラ・マイ・フ。
管理人も昔勉強しました。
当時のブログからの引用も交えて、歌う時のポイントについてまとめてみました。

レチタティーヴォ

「Frondi」から「il fato.」までは、心地よい木陰をいつくしむように歌いましょう。
でも「Tuoni」からは雰囲気を変えて、少し激しく。

レチタティーヴォの基本として、怒りのせりふを言う時はちょっと早口、甘い言葉を言うときはゆっくり、というのがあります。
ですので、「Tuoni, lampi e procelle」は少し早口で次第にクレッシェンドしてたたみかけるように。
一方「Cara pace」は甘くやさしく、ゆっくりと。
というように、レチタティーヴォが単調にならないように、変化をつけて演じましょう。

当時のブログには、

レチタティーヴォは歌いすぎない。
セリフであることを意識する。
ただし、母音はつなげるように。
イタリア語は母音がつながってゆくものなので、「レガートに息を流す」というのは常に必要。

と書いています。

アリア(アリオーゾ)

歌い始めの長い「o——-mbra」の「o」は小さく始めて、少しずつクレッシェンドしましょう。
曲の途中でも、”タイでつながってシンコペーションになる長めの音”は、小さく始めてクレッシェンドすると、バロック音楽らしい雰囲気になります

どのフレーズもゆったりと大きな弧を描くように、気持ちよく息を吸って母音をつなげて歌いましょう
そして各フレーズの終わりは、丁寧に終わってあげるとよいです。
初歩のうちは、次のブレスのことを考えるため、気付かないうちに雑なフレーズの閉じ方になってしまうことがよくあるので。

曲のクライマックスになる「più」が高くて出しにくい場合は、その前の「soave」を歌う時の発声を見直すとよいです。
ここで口蓋を高くして、頭に響く声を出せていると、「più」も出しやすくなります。
しっかりとした息の支えの上で歌いましょう。

発音について

日本人の発音のくせだと思いますが、過去のブログに、

frondiの「f」や、platanoの「p」のあとに「u」が入らないように。
ombraのoをぎりぎりまでのばすと、bのあとにuが入ってしまうのを防げる。

と書いています。

また、「u」の母音は日本語の「ウ」と形が異なりますので、口の中の空間をたてに広く保つように気を付けましょう。

西日本出身の皆さんおめでとうございます!
西日本の「ウ」の発音は共通語と比べてイタリア語の「u」に近いそうです。
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作曲家ヘンデルについて

ヘンデルの肖像画

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759)

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルは1685年、ドイツのハレに生まれました。
音楽家の家系ではなかったので、父親は彼が法律を学ぶことを望んでいました。

しかし少年時代から音楽の才能を示し、教会でオルガン奏者を務めたり、作曲したオペラが人気を博したりしていました。

早くに父親を亡くしましたが、遺志を継いだのかヘンデルは大学で法律を学びます。

しかし音楽への情熱は冷めやらず、21歳のヘンデルはイタリアへ音楽修行の旅に出ます。
当時ヨーロッパの音楽の流行最先端だったイタリアの様式を4年間たっぷりと吸収したヘンデルは、その後ロンドンへ向かいます。

ロンドンではオペラ作曲家として数々の名作を書いています。
ドイツ人作曲家がイギリスで発表した作品ですが、台本はイタリア語、多くのイタリア人歌手が活躍しました。
しかし《セルセ》が上演されたころには、ロンドンでのイタリア・オペラの流行は下火になっていました。
イタリア・オペラを見限ったヘンデルは、活躍の場を英語のオラトリオ作品に移していきます。

1759年、74歳で息を引き取りました。
イギリスに帰化し、亡くなるまでロンドンに暮らしていました。

ヘンデルが《セルセ》のために書いている音楽は、オンブラマイフ以外にもいい曲が盛りだくさんです。
以下の記事ではその一部を紹介しています。

コメント

  1. ベルカント より:

    はじめまして!
    私は日本で声楽と発声を学び、レッスンやコンサートをしている、カウンターテナー 、テノール、バリトンです。
    モレスキのブログが秀逸過ぎて、お聞きしたい事が沢山あったのですが、アポを取る場所がなく、ヴェルヴェッティーノさんで検索をかけたらこちらのブログに辿り着けました〜

    こちらのブログも濃い内容ですね、音楽への愛がヒシヒシと伝わってきます。素晴らしいです。
    自分は発声が専門なので、現代語られるベルカント、というよりロッシーニが滅んでしまったと嘆いた古のベルカント唱法が知りたいと思い勉強してきました。
    学び、研究し、歌っていく中でモレスキの歌をドイツから取り寄せ聞いたところ、全ての答えがあった気がしたのです。
    そして、ネットで調べてヴェルヴェッティーノさんのブログに辿り着き、モレスキに関するブログの最初の所にも引用してあった様に、声区の転換が完璧だから感動したのではない。という部分に全てがあるのではないだろうかと思ったのです。
    モレスキのアヴェマリアを聞いて直ぐに思ったのは、頭声と胸声の使い分けがハッキリと分かるという衝撃でした。
    という事は、クイーンのフレディが躊躇なくファルセットを使う歌い方こそベルカントなのではないかと思ったのです。

    勿論、ヴェルディ以降、特にプッチーニで聞かれるテノールが使うミックスボイスは素晴らしい物ですが、ロベルト・アラーニャが話している様に、「僕達はミュータントなのさ、それ故に苦労する」というような話を聞くと納得してしまうのです。

    そして、ベッリーニやロッシーニのアリアにおいて求められていたのは、モレスキの様な、胸声や頭声の使い分けだった訳ですが、残念ながら様々な理由からその様な歌い方はされなくなってしまいました。

    そして、これらを踏まえてトーズィとマンチーニが残してくれた2冊の本から分かる事は、彼らが書いているのはミックスボイスではないという事です。
    まさにモレスキの様な歌い方が、彼らが望んだ歌い方なのではないかと。
    そして、ミックスボイスが習得出来ず、美声であっても歌手を諦める現状は幸せなのか考えているのです。

    あと、実感として女性のファンから、「先生はカウンターテナー が素敵で」と言われるのです。
    自分は本来テノールで頑張っていて、カウンターテナーはファンサービス的な感じで、そう言われる事が最初はあまり嬉しくありませんでした。
    でも、イギリスに留学したロッカーの弟子が、イギリスのライブでファルセットを使ったら、「君は音域が広い歌手だね」と言われたと言うのです。
    日本だと「あそこで裏声になっちゃったね」と言われるはずです。
    そして、イギリスには両声区を使って魅力的な歌を歌う歌手が沢山いることを知ったのです。
    これはやはり文化なんだと。
    教会などで、この世のものとは思えない、ボーイソプラノなどを聞いている国の人々は美しいファルセットを評価してくれるんだと思ったのです。

    それを聞いて、自分が学んだモーツァルトのテノールのアリアを全て見返してみたのです。
    すると、ディナーミクが高音でp、低音でfになっている箇所が多々あり、おそらく高音をファルセットでドルチェに歌い上げ、テノールはパトロンのご婦人をゲットしたに違いないと思ったのです(笑)

    古楽の専門家のヴェルヴェッティーノさんにとってはツッコミ所満載かもしれませんが、自分の今のところの結論はこんな感じです。

    ここまで来るのに、モレスキのブログは本当に参考になりました。ありがとうございました。

    願わくば、ヴェルヴェッティーノさんの先生がおっしゃる様に、クラシックの発声が最後は何も考えず感情だけで溢れ出る物になって行くと良いのですが。

    この頃は、結局古典音律に迄行きつき、バッハ・ヘンデル様、ベートーヴェン先生がどんな音律と調性で曲にどんな願いを込めたのかということも興味のある所です。

    古典音律の観点からも発声を見ると、ボーイソプラノの様な無垢な声には美しい倍音が沢山乗っている様に思います。
    昔の全寮制のカストラート達の休日は、やまびこの聞こえる谷で練習したと言いますから、現代オペラの様な作った声でなく、エコーのかかりやすい美しく鳴る声でやまびこを聞いていたことでしょう。

    あと、際限がなくて申し訳ありませんが、この前生まれて初めて本物のチェンバロを弾きながら、ラルゴを歌ってみました。12平均律だったのが残念でしたが、チェンバロのボリュームに納得しました。(先程読ませて頂いた、古典調律をする理由も不協和音が際立つというのもびっくりでした)
    むしろ、この楽器を前にしてナポリ民謡の様な声でアリアを歌ったら、当時の貴族は眉をひそめただろうと。
    敬愛するヘンデル様の映画で、スカルラッティとの弾き比べの場面がありますが、チェンバロはどれだけ激しくとも優雅です。日本の貴族も「まろは〜」とか言っていますが、そういうノリだったと思うのです。
    故にモレスキの様な、宗教的にも美しく厳かで、そして豊かさもある歌唱が好まれたのかなと思うのです。

    とは言うものの、昔の音楽は全て消えてしまう芸術。どこまで行っても真実は藪の中です。でも、ヘンデル様やベートーヴェン先生の真意を汲み取りたいと願う気持ちを持ち続ける事が彼らへの誠意だと僕は信じるのです。

    大変長くなり、申し訳ありません。
    平にご容赦を。
    そして、御縁があればこれからも何かあったらご相談させて下さい。
    というか、お聞きしたい事は沢山ありますが、まずはご挨拶という感じでした。
    それでは失礼致しますm(_ _)m

    • ヴェルヴェッティーノヴェルヴェッティーノ より:

      こんにちは。
      大変内容の濃いコメントをいただき感謝いたします!
      そして、アレッサンドロ・モレスキのサイトにしっかり目を通して下さったようで、とても嬉しいです!!

      実は私もはじめてモレスキの録音を聴いたとき――10年以上前、最初はyoutubeでしたが、声区の変わり目がはっきり聞き取れることが意外に感じました。
      ベルカントさんがフレディの名前を挙げていますが、なんかポップスのような感じがしてしまって。。。
      クラシックは声句の転換は聞き取れてはいけないという固定観念があったのですね。

      でも今イタリアの音楽院で古楽を学んでいると、「胸声と頭声を使い分けることを意図して作曲家が書いている旋律」と先生から説明されたりするので、それぞれの声区の音色が美しく魅力的なら、それでいいんだなあ・・・少なくとも古楽は、と思うようになりました。

      ベルカントものと言われているロッシーニやベッリーニも、テノールが頭声を使うことを意図して高音を書いたのでしょうから、それを胸声の音色で歌わなければならないとしたら、ロベルト・アラーニャの言葉通り、大変な苦労を強いられますね。
      ロッシーニはデュプレの発声に、ベルカントが失われてしまったと嘆いたのでしたっけ・・・。

      ポップスの世界では何十年も前からファルセットが魅力的に使われているのですから、最近はベルカントさんのお客様たちのように、クラシックを勉強したり聴いたりされる方の趣味も、追いついてきたのかもしれませんね(笑)

      お弟子さんがロックを学ぶためにロンドンに留学されているのですか!?
      いいですねえ!
      ヘンデルの時代から何百年も、ロンドンの人々は音楽の趣味がいいですよね~

      モーツァルトのテノールのアリアに関するディナーミクの分析、大変興味深いです。
      論文テーマになりそうですね!

      そうそう、チェンバロの音は本当に素敵ですよね!
      古楽科にいるとピアノ伴奏で歌うことがなくなるので、自然と朗々と大声で歌うことがなくなっていきます。
      しかもヴェネツィアの音楽院は天井が高くよく響くので・・・。
      チェンバロはまだしも、リュートやテオルボだとさらに音量が控えめで、歌う方もより丁寧に、こまやかな神経を使って音を聴き、表現するようになります。

      もちろんヴェリズモオペラにもその魅力があるのでしょうが、それぞれの時代の音楽の魅力をできる限り汲み取って演奏したいものですね!
      モレスキの生きた時代はヴェリズモ全盛期かも知れませんが、システィーナ礼拝堂聖歌隊では伝統を大切に、過去のものを受け継いでいこうとしていたのでしょうね。

      こちらこそ、大変興味深いコメントを書いていただき、ありがとうございました。
      ぜひまたこのブログにいらっしゃってくださいね。