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Nel cor più non mi sento:歌詞/対訳/楽譜/発音/ピアノ伴奏/解説

Nel cor pìù non mi sento(もはや私の心には感じない)の歌詞、対訳、発音、歌い方 イタリア古典歌曲
この記事は約15分で読めます。
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「Nel cor più non mi sento(うつろの心)」の歌詞や対訳(日本語訳と逐語訳)、曲や作曲家に関する解説、歌うときのポイントや発音について解説しています。
声楽の個人練習用にピアノ伴奏の動画も紹介しています。

もちろん管理人も勉強した曲。 昔の声楽ノートを読み直しながら、習いはじめたばかりの人にも分かりやすく解説していくよ!

そのほかの「イタリア古典歌曲集」の記事はこちら

Nel cor più non mi sentoの歌詞

Nel cor più non mi sento
brillar la gioventù;
cagion del mio tormento,
amor, sei colpa tu.

Mi pizzichi, mi stuzzichi,
mi pungichi, mi mastichi,
che cosa è qesto ahimè?
pietà, pietà, pietà!
amore è un certo che,
che disperar mi fa!

Nel cor più non mi sentoの対訳

日本語訳

もはや私は心の中には感じない
青春の輝きを
私の苦しみの原因は
愛よ、お前の罪なのだ。

お前は私をつねってからかい、
ちくりと刺して噛みつく
ああ これは何なのだ?
もうやめておくれ!
恋とは間違いなく
私を絶望させるものだ!

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逐語訳

単語ごとの日本語訳を載せますので、一語一語の意味をなるべく心に留めて歌いましょう!

Nel cor   più non   mi sento
(心の中に) (もはやない) (私は感じる)

brillar  la gioventù;
(輝く)  (青春)

cagion  del  mio tormento,
(理由) (の) (私の苦しみ)

amor,     sei    colpa  tu,
(愛) (be動詞二人称形) (罪) (きみ)

Mi pizzichi,     mi stuzzichi,
(君は私をつねる) (君は私をからかう)

mi  pungichi,    mi  mastichi,
(君は私をちくりと刺す) (君は私を噛む)

che cosa è  qesto  ahimè?
(~は何もの) (これ) (感嘆詞)

pietà, pietà, pietà!
(慈悲、なぐさめ、あわれみ)

amore  è  un certo  che,
(愛)  (は) (確実) (関係代名詞)

che disperar  mi   fa!
(絶望する) (私を) (~させる)

歌詞と対訳のポイント

イタリア在住4年目の管理人から一言!!
  • colpaは現代のイタリア語では「過ち」の意味で、「colpa mia(私のせい)」「colpa tua(君のせい)」の形でよく使います。
  • ahimèohimèは現代では聞かない感嘆詞です。 オペラの登場人物が使う言葉(笑)
  • cheは英語の「what」のように疑問詞としても関係代名詞としても使います。
  • certoは「ある〇〇」の意味もありますが、「確かな、確実な」という形容詞で使うことが多いです。 英語の会話文で出てくる「Of course(もちろん)」のように「Certo!」と一語で答える場面もよく見かけます。

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Nel cor più non mi sentoの発音の目安

イタリア語の発音をカタカナで正しく正確に表すことはできませんが、目安として載せておきます。 カタカナと異なる発音は、

  • 母音のUが日本語のとかなり異なります
  • 子音のあとに母音を表すアルファベット(a,e,i,o,u)が続かないとき 例えば「cor」は「コール」ではなく、Rは舌を巻くだけです。 Rのあとにuは入らないので日本語の「ル」とは異なります。

ネル コール ピウ ノン ミ セント
ブリッラール ラ ジョヴェントゥ
カジョン デル ミーオ トルメント
アモール セイ コルパ トゥ

ミ ピッツィキ ミ ストゥッツィキ
ミ プンジキ ミ マスティキ
ケ コーザェ クエースト アイメ
ピエタ ピエタ ピエタ
アモーレ(エ)ウン チェルト ケ
ケ ディスペラール ミ ファ

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おさめられているのは19曲。全音楽譜出版社のイタリア歌曲集全曲を網羅しているわけではありません
収録曲は下の +ボタン を押してご覧ください。
 
    • Amarilli, mia bella / カッチーニ
    • Lasciatemi morire! / モンテヴェルディ
    • Intorno all’idol mio / チェスティ
    • Le violette / スカルラッティ
    • O cessate di piagarmi / スカルラッティ
    • Se tu della mia morte / スカルラッティ
    • Tu lo sai / トレッリ
    • Deh, piu a me non V’ascondete / ボノンチーニ
    • Caro laccio,dolce nodo / ガスパリーニ
    • Per la gloria d’adorarvi / ボノンチーニ
    • Se tu m’ami / ペルゴレージ
    • Selve amiche / カルダーラ
  • Piacer d’amor / マルティーニ
  • Nel cor piu non mi sento / パイジェッロ
  • Il fervido desiderio / べッリーニ
  • Ma rendi pur contento / べッリーニ
  • Ancora! / トスティ
  • Segreto / トスティ
  • Quando ti rivedro / ドナウディ
MEMO
「Nel cor più non mi sento」は14曲目に収められています。

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Nel cor più non mi sentoのピアノ伴奏

中声用の楽譜(ヘ長調)で弾いている伴奏です。
声楽の練習用に使って下さい。

Nel cor più non mi sentoの楽曲解説

「Nel cor più non mi sento」は、1788年にナポリのフィオレンティーニ劇場で初演されたオペラ・ブッファ《L’amor contrastato(身分違いの恋)》の中のアリエッタです。

このオペラは現在では再演時のタイトルを取って《La molinara(水車小屋の娘)》 と呼ばれています。

アリエッタとは、アリアと同じようにオペラの中で歌われるものですが、アリアより小規模なものを差します。

なおオペラ・ブッファというのは、市井の人々の物語をコメディタッチに描いたものです。 モーツァルトの《コジ・ファン・トゥッテ》や、ロッシーニの《セビリアの理髪師》などがオペラ・ブッファに含まれています。 貴族の世界や歴史上の人物を描いたオペラ・セリアと比べると、日常的な言葉が使われています。

だからNel cor più non mi sentoの歌詞も結構分かりやすいイタリア語で書かれていますね。

歌舞伎で言ったら、オペラブッファ=世話物オペラセリア=時代物ってとこかにゃ?

Nel cor più non mi sentoの作曲家パイジエッロについて

ジョヴァンニ・パイジエッロ(Giovanni Paisiello、1740ー1816)は、古典派初期に活躍したイタリアの作曲家
年齢的にはハイドンより8歳若い。 ナポリの音楽院出身で、フランチェスコ・ドゥランテに学んだ

ドゥランテの弟子にはパイジエッロのほかにも、ヨンメッリ、ペルゴレージ、ピッチンニ、ヴィンチと錚々たる顔ぶれが並ぶ。

ドゥランテ自身はナポリ学派の大家、アレッサンドロ・スカルラッティから作曲を教わっているので、ナポリ楽派の血脈はバロック時代から古典派時代へと脈々と受け継がれていったわけだ。

ロッシーニが現れるまで《セビリアの理髪師》といえばパイジエッロの作品だった。 バロック時代からロマン派初期までは、同じ原作や台本に作曲するのは一般的なことだった。

パイジエッロは1700年代後半にもっとも成功したオペラ作曲家の一人に数えられ、モーツァルトにも影響を与えた。 オペラやカンタータのような世俗曲だけでなく、ミサ曲やオラトリオなど宗教音楽も残している。

このページトップの見出し画像に描かれている肖像画が、パイジエッロさんだよ。 フォルテピアノを弾きながら作曲中かにゃ?

Nel cor più non mi sentoを歌うときのポイント

実際の譜面を見ながら解説していきます。 楽譜はヘ長調(中声用)のものを使います。

恋の苦しみを歌ったアリエッタ

オペラ・ブッファの中の曲らしく、明るい曲調ですが、和訳を見ていただくと分かるように、テーマは「恋の苦悩」です。 ですので、軽やかな中にも詩を表現できると良いと思います。

Nel cor più non mi sentoは弱起ではじまる曲

「Nel cor più non mi sento」の中の多くのフレーズが弱起ではじまります。 でも言葉のアクセントは、強拍に来るように作曲されています。 以下の楽譜を見ていただくと分かりやすいと思います。

Nel cor più non mi sento、最初のフレーズの譜面

Nel cor più non mi sento、最初のフレーズの譜面

  • 赤丸を付けたのが弱起になっているフレーズの最初の音
  • 青丸が強拍に来る音

前置詞nelよりcorのほうが大事な単語なのは明白だし、「mi sento(私は感じる)」のアクセントは「e」に落ちるし、という具合に、旋律の強拍に言葉のアクセントが来るように作曲されています

ですから弱起に惑わされず、拍の頭に自然なアクセントが来るように歌いましょう

イタリア語発音のコツ=子音は短く、母音を長く

特にイタリア語の歌を歌うとき、母音を気持ち長めにしてつないでいくことで、レガート感を出すことがとても大切です。 最初のフレーズ「Nel cor più non mi sento」を例にとって説明すると、

  • Nel:Neを長めに歌い、小さくLを添える。八分音符を16分音符に分割して「ネ・ル」と言ってしまわないように注意。
  • cor:Coを長めに歌い、巻き舌のRを添える。
  • più:uの上に乗っているのはアクセント記号なので、この単語はiではなくuにアクセントが落ちる。よってpiではなくuで延ばすイメージ。 pの子音を短くはっきりと発音する。
  • non:noを長めに歌い、nは小さく。nを歌う時に息を止めたり、nがウになったりしないように。
  • miは簡単ですね!
  • sento:seでのばし、次の拍の寸前にnを添えるのはnonの歌い方と同じ。

という具合になります。 しかし二重子音は、はっきりと長めに歌うこと。 2番目のフレーズ「brillar la gioventù」で早速Lの二重子音が出てきますね。

日本語の促音(つまる音「っ」のこと)のように息を止めるのではなく、舌をLの位置にしたまま息を流すイメージです。

「brillar la gioventù」を歌う時のテクニック

声楽を習い始めた頃のノートを読み返すと、「brillar la gioventù」と「amore è un certo che」が歌いにくかったそうです。 なので歌い方の解説を書いてみます。

Nel cor più non mi sento2つめのフレーズの譜面

Nel cor più non mi sento 2つめのフレーズ

  • 「la」の装飾は焦点をつかんで動かさない
  • 「gioven~」の上昇フレーズ:上あごをあげてゆく。エの母音が平たくならないように。
  • 7度下がる「tù」、横隔膜の支えをしっかり保ちピッチが不安定にならないように
息を吸うときのように横隔膜を外側へ張るイメージで支えると、下腹部が内側に入って固くなったりしないから歌いやすいよ!

「Mi pizzichi」~のBの部分

Nel cor pìù non mi sentoのB部分の譜面

Nel cor pìù non mi sentoのB部分

「Mi pizzichi」から始まるBの部分は、イタリア語の発音が特徴的でおもしろいですね。 子音をはっきりと発音することで、より”痛みを感じている雰囲気”を表現できます。

唇の先に子音を乗せるイメージにすると歌いやすいです。

また、曲頭のレガートなフレーズとのコントラストを付けられますので、「Mi pizzichi, mi stuzzichi」をややスタッカート気味に歌うと感じが出せます。

B部分はイ母音が続きます。 口を横にひらくと響きがなくなるので、口の中は縦の空間を維持するイメージで。 「che cosa è qesto ahimè?」ではまたレガートに歌って、コントラストの違いを際立たせましょう。

このフレーズは問いかけであること、ahimèが感嘆詞であることを忘れないように!

「Che cos’è qesto?」は「What is this?」の意味で、現代のイタリア語でも普通に使うフレーズだよ。

「pietà」を3回繰り返す箇所

Nel cor pìù non mi sentoの「pietà」の歌詞部分の譜面

Nel cor pìù non mi sentoの「pietà」の歌詞部分

同じ言葉を3回繰り返している意味は? 単調な繰り返しにならないために、どんな表現をしたらいいだろう?

「pietà」は神様やマリア様を連想させる言葉です。 ただしオペラなので、前半でamoreに語り掛けていることからも、ここでは愛の神に対して、 「どうかお慈悲を! 見逃して!」 と言っているのでしょう。

世俗的なオペラで神の名を出すことは不謹慎だとされていたので、オペラの中の登場人物はギリシャ・ローマ神話の神々の名前を口にして祈ることが多かった。

どんな表現をしたら、オペラの中の1曲らしくなるか考えて歌うと楽しいですよ!

「amore è un certo che」を歌う時のテクニック

声楽を習い始めたばかりの頃、歌いにくいと思っていた箇所の2つめがこれ、「amore è un certo che」の部分です。

  • まず「amore è un certo che」のフレーズの前でしっかりと息を吸う。フレーズ後半をたっぷりとした息で歌えるように
  • Cheを縦にあけて歌う。上あごを高くしながら咽頭があがらないポジション。 エ母音の高音はイタリア語のU母音に近い唇の形で歌うと、まろやかな音色になる。 cheを歌いながら口の形を変えると母音の形が変わってしまうことがあるので注意。
  • 横隔膜の支えをしっかりとして息を送る
「Nel cor più non mi sento」の最後のフレーズの歌い方を示した譜面

「Nel cor più non mi sento」の最後のフレーズの歌い方

ちなみに上の楽譜ではフレーズ字体にクレッシェンドが書いてありますが、作曲された年代を考慮すると、パイジエッロ自身が書き込んだクレッシェンドではない可能性も大きいです。

フェルマータでのばしているときに、メッサ・ディ・ヴォーチェ(クレッシェンドしてからデクレッシェンドするバロック時代の声楽テクニック)を使うと、前古典派らしい雰囲気になって素敵かもしれない・・・!

でもこの曲を勉強するのは声楽を習い始めたばかりの方かも・・・なので、指導者の解釈に従って歌って下さいね~ 最後のフレーズは「disperar (絶望させる)」の歌詞を表現するように歌いましょう!

Nel cor più non mi sentoの歌い方に関するあとがき

8年前のノートに、練習が必要な点として「brillar la gioventù」と「amore è un certo che」のフレーズを挙げていた理由が今は分かります。

私の声は(古楽ではなく)”メインストリームの声楽用語”で言えばメゾなのですが、当時はパッサッジョであるミ♭を越えるテクニックが分からなかったんですね・・・。

メゾやバリトンの声の人は、イタリア古典歌曲集中声用を勉強していると時々こうした歌いにくい音が1曲の中に2~3音出てくると思います。

下あごや舌根など力を入れるべきでないところの緊張を解いてしっかり息を送ると、いとも簡単にパッサーレ(通り過ぎる)ことができます。 書くと単純なことなんだけど、体が覚えていつでも出来るようにするまでは、ちょっと時間がかかるんですよね・・・。

イタリア古典歌曲(アリア)集、ほかの曲の解説記事

イタリア古典歌曲(アリア)集に収録されている曲の解説はほかにもあります。 声楽の勉強の参考にしていただけると嬉しいです。

喉を大切に、楽しく練習しよう

くれぐれものどは大切にね。
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  1. 匿名 より:

    本当に有り難うございました