(今回の写真も音楽院の教室で撮ったものです。バロック声楽やチェンバロのレッスンは大体このチェンバロのお世話になります)
おととい更新した記事「実技系の個人レッスン ~通奏低音演習~」に関しまして、昨日ツイッターでこのようなリツイートをいただきました。
通奏低音はやはり独学では無理っぽいなぁ····· https://t.co/asE408gPBv
— さとぴぃ@絶滅危惧種 (@Trilobite22) 2019年4月23日
さとぴぃさん、ありがとうございます!
そこで、日本にいたころに通奏低音の勉強を独学し、イタリアに来てから個人指導を受けている管理人が、通奏低音は独学で弾けるようになるのか? レッスンを受けるメリットは? などの疑問について考えてみます。
- 初歩のうちは独学で学べることがたくさんある。
- 実際伴奏するとなったら、レッスンを受けたほうがいい。
- レッスンを受けていても上達の鍵は自主練習での定着にある!?
ということです。
以下、ひとつずつ見ていきましょう!
解説記事 Webで独学!【通奏低音講座 基礎編】を読んで数字付き低音譜のリアリゼーションを学ぶ
通奏低音について、独学で学べること
通奏低音をどうやって独学したか
管理人は日本にいたころ、ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767)の本『通奏低音の練習 ~歌いながら、弾きながら~』を使って一人でピアノを弾いて通奏低音を学んでいました。
数字の仕組みを覚えたり、反射的に手が動くようにしたりするには、一人で繰り返し練習する必要があります。
なお、このような初歩段階ではチェンバロでなくピアノで学んでも大丈夫です。
独学で勉強しておいて、よかったこと
音楽院に入学してから、日本で学んでおいて良かったと思いました。
数字と和声の結びつきをゼロから学ぶ学生に比べたら、ずっと進んだところから学び始められます。
通奏低音の授業は1年目から必修ですので、イタリア語が不自由なころから受けなければなりません。
通奏低音や和声法などの理論科目は、数学の授業を外国語で受けるようなものです。
言葉のハンディキャップが理解力に直結するので、入学前から通奏低音について軽くふれておくことは、言葉のハンディを充分にくつがえすアドバンテージになりました。
あまり古楽に興味を持っていない学生の場合は、通奏低音の存在自体を知らないこともあります。
その学生は外国人留学生だったので、言葉の壁もあって和声法の授業だと早とちりしていたそうです。
「あの教授はどうしてあんな変な方法で和声法を説明するんだろう。すごく分かりにくい」
と言っていたので、
「バッソ・コンティヌオ(イタリア語で通奏低音のこと)は和声法と似てる部分もあるけど、和声法以前のバロック時代の理論で別物だよ」
と教えてあげたら、
「そうだったのか!」
と納得していました。
通奏低音のレッスンを受ける利点
通奏低音のレッスンを受けるメリットはなんといっても、弾いているその場で間違いを指摘してもらえることですが、それだけではありません。
弾いている和声が正しくても、より良い演奏にするためのコツがたくさんあります。
ポジションについて学ぶ
右手をどの高さで弾くか、です。
例えばソプラノ・リコーダーの伴奏をするなら、あまり低い音で弾くとリコーダーのメロディと離れてしまうので望ましくありません。
かと言って、リコーダーのパートより高い音を弾くのも避けたいところです。
ちょうどいい音域を保ちつつ、左手のバスの旋律と平行に動かず、なるべくポジション移動の少ない動きで和声を弾くことが求められます。
つねに4声で伴奏する必要はない
曲想にあわせて弾く音数を少なめにするのか、豊かにするのか、判断するコツを教えてもらえます。
静かな曲や軽やかな曲では右手で1音か2音しか弾かないようにします。
管理人の感覚だと、いつも自分で思っていたより軽やかに弾くイメージです。
アーティキュレーションを知る
楽譜通りに奏する左手の弾き方ひとつとっても、レガートなのか、ノンレガートなのか、スタッカートに弾くのかで、曲調が変わります。
右手もつねに同じ調子でアルペジオをしているのでは芸がありません。
ちょっとしたニュアンスの違いで、グッとセンスのいい演奏になります。
CDや演奏会で巨匠の演奏を聴いて技を盗むことも勉強になりますが、自分で実際に弾いてみたものをその場でプロに”添削”してもらうのは、さらに効果的です。
「こんな感じで」
と先生が演奏で例を示して下さると、途端に曲が輝きだします。
装飾や対位旋律について
伴奏を弾きながら右手にトリルを加えたいとき、どういうポイントで入れると自然で美しいのか、また歌やリコーダーなどの旋律楽器のブレスのタイミングで、オブリガードのような対位旋律を入れる手法についても学びます。
創意工夫が発揮できて楽しい部分ですが、フランスの曲ならトリルは多めでより優雅に弾くなど、それぞれの国、時代、曲想にあわせたスタイルを学ぶ必要があります。
そうしないといつも”手癖”で似たようなフレーズを弾くことになってしまいます。
レッスンの予習・復習が大切
レッスンを受けていても、かなり自主練習の時間が必要です。
習ったことを頭で理解していても、実際に弾けなければ意味がないですし、さらに言えば反射的に右手が動かないといけません。
そのためには練習あるのみです。
即興でスタイルにあった趣味のいい伴奏ができるようになりたいものですね!
まとめと関連記事
ここまで、通奏低音は独学で弾けるようになるのか? について見てきました。
独学も意味のあることで、決して無駄ではありません。
正しい和声を押さえるところまでは、独学でできるようになるはずです。
解説記事 Webで独学!【通奏低音講座 基礎編】を読んで数字付き低音譜のリアリゼーションを学ぶ
でもそのもっと先、美しい魅力的な伴奏をするには、レッスンを受ける必要があります。
そしてレッスンをより有意義な時間にするためには、一人で練習する時間が欠かせません!
ということで、しっかり練習したいと思います!!
こちらがおととい更新しました「実技系の個人レッスン ~通奏低音演習~」の記事です
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