イタリアにも日本と同じように国民健康保険制度があるの?
あるよ! 日本と同様、国民皆保険なのでイタリア人はみんな加入しています。外国人留学生も一定の条件を満たせば加入できるにゃ。
この記事では、2018年からイタリアの国民健康保険に加入し、4年目の更新手続きを終えた筆者が、イタリアで留学生が国保に加入する手順について説明しています。
- イタリアの健康保険に留学生が加入するメリット
- 健康保険への加入手続き
- 保険料や、加入のための必要書類
イタリアの健康保険制度「SSN」
イタリアの健康保険は「Servizio Sanitario Nazionale(セルヴィツィオ・サニタリオ・ナツィオナーレ)」、略してSSNと呼ばれます。英語にするとナショナル・サニタリー・サービスって感じ――”国の衛生サービス”ということで、日本の国民健康保険のような役割をになっています。
加入するとtessera sanitaria(テッセラ・サニターリア)と呼ばれる保険証が交付されます。
留学生はイタリアの健康保険に加入するべき?
留学生のイタリア国民健康保険への加入は義務ではありません。むしろ権利。滞在許可証と住居証明があれば加入できます。なお外国人も就労者は給与から税金として天引きされるので、自動的に加入となります。
ビザが必要ない3ヶ月未満の留学の場合は
クレジットカードの付帯保険で済ませることもできます。筆者は本格的な長期留学の前にお試しレッスンや音楽院入試のために渡欧していますが、エポスカードの付帯保険で済ませました。
3ヶ月を越える留学の場合は
しかし音楽院留学など3ヶ月を越える留学の場合は就学ビザが必要になります。ビザ取得のためには、ビザの期間をカバーする海外旅行保険や留学保険に加入する必要があります。AIG損保の留学生用プラン などこのタイプの保険は補償が手厚いので、イタリアの国保に加入する必要性はあまりないでしょう。筆者も留学保険でカバーできる1年目は留学保険のみで過ごしていました。
留学生がイタリアの健康保険に加入するメリット
- 登録医(medico di base)の診察が無料
- 薬局でくすりを安く購入できる
- 公立病院での処置に保険がきく
「チケット」と呼ばれる料金を支払うので無料ではありません - ビザのために加入した留学保険を延長するより安い
イタリアの健康保険加入費用と期間
イタリアの国民健康保険料は現在、1年間で149.77ユーロです。この1年間というのは1月から12月まで。そのため何月に加入しても、保険期間は加入日から年末の12/31までとなります。
イタリア国保より安い保険もある
滞在許可証更新のためには必ず何か保険に加入しなければなりません。補償内容の充実度より保険料の安さを求めるなら「WAI(Welcome Association Italy)保険」でしょう。
2021年現在、WAI保険の年間保険料は122ユーロなので、イタリア国保より1年間で28ユーロ程度安くなります。
なお筆者自身はWAI保険には加入したことがありません。
イタリアの健康保険の加入手続き
留学生がイタリア国保に加入する手続き方法について説明します
- 郵便局から保険料を振り込む。
- 最寄りのASL(Azienda Sanitaria Locale)で必要書類を提出
- 登録する個人医を選ぶ
- 紙の保険証を受け取る
- 後日、郵送でカード型保険証が届く
以下、補足します。
健康保険料の振込先
年間保険料149.77ユーロの振込先は住んでいる州によって異なります。
郵便口座番号 343301、振込先口座名 Poste Italiane SPA.C.S.S.N Regione Veneto
Causale(振込の理由を書く欄)には、「Iscrizione Volontaria Servizio Sanitario Nazionale in Regione ~(←お住まいの州)Anno 20XX(←加入年)」と記入します。「20XX年の〇〇州の国民健康保険登録のため」といった意味です。
お住まいの州の保険料振込先が分からないときは
保険料の振込先はインターネットで調べられます。しかしイタリアに来て2年目の留学生にとって、イタリア語でWeb検索して目当ての情報を探すのは結構大変。居住地を管轄するASL(Azienda sanitaria localeの略)へ直接行って、振込先を聞いたほうが早いかもしれません。このとき必要書類についても確認しておくと安心です。
居住地を管轄するASLの場所さえ分からないときは
そもそも自分の地域の管轄ASLが分からないときは、近くの公立病院へ行って、「保険証(tessera sanitaria)がほしいのですが、どこへ行けばいいでしょうか」と訊けば教えてくれるはず。無駄な仕事を増やして申し訳ないと思いながら、丁寧にうかがうのがポイント。
私が聞きに行った総合病院の受付の人は、この質問回答用に用意されたASLの地図・電話番号・窓口時間が書かれた紙を渡してくれました。すでに用意してあったということは、こういう質問が頻繁に来るんだろうなあ…… とはいえ、ネット検索すれば分かるようなことを訊きに行ったにも関わらず、丁寧に対応してくれて感謝しかないです。
健康保険加入の必要書類
ASLに提出する書類です。
- 滞在許可証 (申請中・更新申請中の場合は、滞在許可証書類を郵便局から送る際に渡される3点セット―振込を証明する書類、questuraへの呼び出し状、もう一枚の小さな紙を持っていく)
- 保険料振込済みの郵便振込用紙
- 学校が発行してくれる在学証明書
- パスポートのコピー(原本も持っていくこと)
- Codice fiscale(納税番号)
- Dichiarazione di Ospitalità(住居証明)か、residenza(住民登録)
- 更新の場合は旧保険証
イタリアあるあるですが、国のシステムのはずなのに地域によって必要書類が異なるパターンが存在するので、お住まいの地域の管轄ASLで「これこれの書類もなきゃダメ」と言われたら、その都度そろえましょう。
ヴェネツィアのASLはどこ?
管轄ASLの場所ですが、ヴェネツィア在住の場合はジュスティニアン病院(Ospedale Giustinian)の中のAnagrafe Sanitariaという窓口で加入手続きを行うことができます。月曜から金曜の午前8時半から11時半しか開いていません。11時20分にすべり込んで番号札さえゲットすれば12時半まで待っても対応してくれました。
2021年1月現在はコロナ対策で完全予約制になっています。あらかじめ電話してアポイントメントを取らなければ入れません。
個人医の登録
無事、必要書類のOKが出たらmedico di base (メディコ・ディ・バーゼ=ベース・ドクターといった意味)を選びます。個人医のリストが用意されており「この中からどれか選んで」と言われます。リストには医師のフルネームと診療所の住所が記載されています。
筆者は当時住んでいた家に一番近い住所の診療所を選びました。待ち時間も少なく親切な先生だったので、毎年の更新時に変更することなく、引っ越しても同じ先生を登録しています。島の中の引っ越しなので、遠くなっても徒歩15分以内ですし……
近所に住んでいる友人に評判のよい診療所を聞いておくのもよいかも知れません。リストには医者の名前と住所しか書いていないので、おすすめを訊くときにはしっかりフルネームをメモしておくこと。ちなみに登録医は年度の途中でも変えられるシステムだそうです。
イタリアの健康保険証は紙とカード型両方
個人医の登録まで進むとその場で、厚紙を三つ折りにした保険証を受け取ることができます。ただし2020年度は「来年にならないと渡せないから1月2日に来て」と言われました。2021年の今年はそもそもコロナ対策のため予約制で、保険証更新手続き自体が年明けになったので、その場で受け取ることができました。
そして後日、プラスチック製のカード型保険証が家に届きます。これ、2020年は届きませんでした…… 自分が引っ越しをしたせいかと思っていたのですが、ずっと同じところに住んでいる友人も届かないと言っていたので、もしやコロナ流行のごたごたで事務所が機能していなかったのだろうか?
カードが届かなくても、ASLで個人医の登録まで進めれば、登録医に無料でかかって安い値段でくすりを買えます。
なお保険証の有効期間は「滞在許可証の有効期限と同じになる」説や、「学校の在学証明の期間に一致させられた」という話も聞きました。ただし筆者の場合は毎年12月末までになっています。
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