海より深い!?「海獣の子供」原作の感想と考察(ネタバレ含)

「海獣の子供」 娯楽
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イタリアに留学する前は、図書館で本を借りたり、テレビで放映される映画を観たりして、お金をかけずに気楽にできる息抜きがありました。

日本のサブカルチャーに触れる機会が限られている海外生活になってから、漫画アプリ「マンガワン」を読むように。

マンガワンには先月から、五十嵐大介先生の「海獣の子供」が掲載されています。
海獣の子供」は、6月7日にアニメーション映画の公開が決まっています。
軽い気持ちで読み始めたところ、命の根源を扱った深い内容に圧倒されました。

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「海獣の子供」とは?

2006年2月号から2011年11月号まで雑誌『月刊IKKI』に連載されていた五十嵐大介先生の漫画です。
全5巻からなり、第38回日本漫画家協会賞優秀賞、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞に選ばれています。

「海獣の子供」の簡単なあらすじ

主人公は中学生の少女・琉花(るか)。
部活動の仲間や顧問との人間関係がうまくいっておらず、落ち込みがち。
別居中の両親にも心の内を見せない琉花が、ジュゴンに育てられた少年「海」と「空」に出会って、生命の神秘に触れて行く物語です。
ジュゴンとは海に生息する大きな哺乳類。

同時に世界中の水族館で、魚が光って消えるという怪事件が続いており、その謎解きも物語の筋に深く関わってきます。

アニメーション映画は6月7日(金)から全国で公開

制作スタッフ

  • 監督:渡辺 歩
  • 音楽:久石 譲
    長編アニメーション映画を担当するのは2013年のジブリ映画『かぐや姫の物語』以来。
  • 主題歌:米津玄師「海の幽霊」
  • アニメーション制作:STUDIO4℃
    映画 『鉄コン筋クリート』で第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞

豪華声優陣

芦田愛菜、石橋陽彩、浦上晟周、森崎ウィン、稲垣吾郎、蒼井 優、渡辺 徹、田中泯、富司純子

(映画公式サイト http://www.kaijunokodomo.com より)

映画のトレイラー(予告)

【6.7公開】 『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )

映画化への期待ポイント

スタッフやキャストが豪華!というようなことは、管理人は芸能界に疎いのでよく分かりません。
でも原作の漫画を読んでいると、大きなスクリーンでカラーで見られたらどんな衝撃だろうとワクワクします

この作品は海に潜るシーンがたくさん出てきます。
管理人は沖縄の離島、水納島(みんなじま)でシュノーケリングをしたことがあります。
澄んだ水、複雑な海底の地形、カラフルな南の魚たち、サンゴ礁に住む様々な生き物の豊かな姿に圧倒されました

そうした生命にあふれた海の姿をアニメーション映画で見られると思うと、必ずや素晴らしい映像だろうと期待で胸がふくらみます。

漫画は白黒で静止画だからこそ想像力が刺激されるものですが、やっぱり躍動感にあふれるカラーの海も見たいですよね!

少し心配している点

原作漫画は全5巻なので、決して長大な作品というわけではありません。
ですが後半に進むに従って、キャラクターたちの会話も思索もどんどん深くなっていき、哲学のようです。
ざっと読んでは意味が分からないので、ゆっくりと一語一語かみしめるように、何度も読み直すぐらいです。
だから、難解な内容を耳から聞いただけで理解できるのだろうか? という心配があります。

原作を読んでいないお客さんに、映画だけでこの作品の思想を伝えることは、決して簡単な仕事ではないでしょう。

でも原作の漫画が伝えようとしていることは、頭で理解するより心で感じ、魂の底で共鳴するような体験
それこそは映像と音楽をフル活用できる映画だからこそ、観た人に特別な体験を提供できるのではないかと思っています。

作中に、

音楽や詩はこの宇宙のいたるところに満ちている
(中略)
きっと生命も同じところから来た……

というセリフがあり、音楽好きとしては感動しました

映画では、作曲家・久石 譲さんの音楽が言葉をはるかに超える雄弁さで、物語ってくれることでしょう。

ワールドプレミア上映会に当選した人の感想は?

ツイッターでみつけた感想をいくつかご紹介します。

アプリ「マンガワン」のコメント欄にもワールドプレミア試写会を観た方の書き込みがありました。

原作はかなり端折られています。
が、映像美は圧巻ですよ。
原作を完読してから見るのがお勧め。

(5月20日更新第三十四話(後編)のコメント欄より引用)

やはり原作を読み込んだ読者から見ると、当然ながら圧縮された印象はあるようですね。

ただ長編の小説や漫画を映画化する場合、映画は尺が決まっていますから、エキスを抽出して伝えることになるのは仕方ないと思います。
「海獣の子供」の重要なシーンは、哲学的な言葉でやりとりされるシーンもありますが、一方でセリフがなく、海や海底の生き物たちの様子が延々と描かれているだけのシーンもあります。
そしてそうした絵画的な演出こそがとても印象的なので、それを「圧巻の映像美」で観られるならやっぱり楽しみです。


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「海獣の子供」の原作を試し読みできるサイトは?

難解といえる部分もありますが、ぜひ多くの方に原作漫画を読んでいただきたいです。

ヤフーの電子書店「ebookjapan」で1巻まるごと無料

第1巻は、まるごと「ebookjapan 」で試し読みできます。
会員登録やアプリのインストールなどの手間は一切なく、すぐに読み始められます。
ebookjapanは、今年の3月28日にYahoo!ブックストアから生まれ変わったサービスです。

アプリ「マンガワン」で毎日1話ずつ更新中

インストールが必要ですが、小学館のアプリマンガワン」でも1巻無料です。
2巻以降も毎日1話ずつ更新されており、この記事を書いている5月21日現在第三十五話(4巻の最後)まで載っています。
課金をしないと1日に読める話数が限られていますが、少しずつ読み進めたい方はマンガワンのインストールもおススメです。


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「海獣の子供」原作漫画の感想と考察

ここからは管理人の感想と考察です。
※一部ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください!

テーマは「命のコミュニケーション」?

管理人はこの物語を、孤独をかかえた思春期の主人公琉花が、海の生き物ひいては宇宙の星々の生死までをも感じることで、世界とのつながりを取り戻していく話だと感じています。

中学生になると、言葉を用いたより高度なコミュニケーションが求められます。
大人の社会へと一歩ずつ近づいていく時期ですが、心も体も成長途中で難しい年ごろです。

琉花が部活仲間にも家族にも言うべきことを言わず、孤独な世界に閉じこもっているように見えるのは、最初のうちよくある設定だと思っていました。
でも読み進めて行くうちに、言葉を使った人間の限定的なコミュニケーションと、海の生態系を取り込むクジラの「ソング」が対比されているのかも知れないと気付きました。

4巻の終わりで登場人物の一人アングラードが、

“言葉で考える”って事は決められた型に無理に押し込めて、はみ出した部分は捨ててしまうという事なんだ。

と語っているように、言葉で表現できないことは、大人の頭では理解できません。
でも子供は違います。
言葉を必要とせずに、ほかの生き物たちのように世界を感じています。

思春期の琉花は子供から大人へと変わる境界線にいるからこそ、この物語の主人公なのでしょう。

序盤、読者から見て言葉足らずだった少女が、海の中で命の躍動を全身に感じ、世界とのつながりを取り戻していく――それによって孤独が癒されていくという成長物語も含まれているのかなと感じました。

命の輪の中で「死」は怖いものではない

人間だけが閉じ込められているのは、この物語によれば言葉という枠だけではありません。

同じく4巻の中で子供時代の空が、

人間だけが「死」までの区切られた時空に閉じ込められている。

と言っています。
彼にとって死ぬことは、「形が変わるだけ」とのこと。

生まれる 食べる 食べられる。
体の一部になる。
土になったり、森になったり。
変わりながらぐるぐるまわる流れの中の一瞬にすぎないのに。

つまり食物連鎖の輪のことを言っているのですが、多くの地域の人間が現在、様々な動植物の命をいただいて生きていながら、自らがほかの生き物の身体になることは、ないんですよね。

生まれることも死ぬことも大きな命の輪の中で回っているだけという、宗教観のようなものが語られています。

読み始めたばかりのころ、管理人は「動物愛護の話かな」と思っていましたが、そんな安易な物語ではありませんでした。

クジラ漁の話が出てくるところで気づきました。

アイヌ神話の考え方も同様ですが、世界各地の信仰には、人間が狩り、食物とする動物が神様であるという考え方が存在するそうです。
クジラ漁のエピソードでは、まさにクジラを敬いながらいただきます。
「知能が高いクジラを食べるなんて残酷」という次元の話ではなく、ほかの命への畏敬を持ちながら分けてもらうという思想でした。
そもそも知能が高い動物を上に位置付ける考え方が人間の自分本位だそうです・・・デデというキャラクターがばっさり言っています。

このクジラ漁のエピソードで、ジムが銛(もり)を突き刺して捉えることに成功したクジラが、空という少年に生まれ変わったのかと思わせる言葉が出てきます。
――空がジムに対し、「あなたの銛を受け入れた」というところは、ドキっとしますね。

手塚治虫の名作「火の鳥」に通じる世界観

管理人は小学6年生のころ、手塚治虫の「火の鳥・復活編」を学校の図書室で読んで、ものすごい衝撃を受けました。
まだ子供だったので「命の大切さがわかった」というありがちな言葉でしか表現できませんでしたが、ミクロの生き物から宇宙エネルギーにいたるまで、生命そのものを扱う内容に圧倒されたのです。

そのとき初めて、宇宙エネルギーというのが1つの生命体で、人間の体の中に色々な臓器があるように、宇宙の中にはたくさんの銀河系があり、その中に星々があり、またその中に生き物がいる――宇宙をひとりの人間にたとえるなら、地球上の生き物は小さなミクロの細胞のようだという考え方を知りました。

一神教は宇宙全体の姿を見ており、宇宙をひとりの人間とみなすように、唯一の神様と捉える見方です。
一方多神教は細胞ひとつひとつを見て、自然物すべてを命の宿る神的な存在とみなす捉え方なんだと理解するようになりました。

「海獣の子供」では海と宇宙の近似性が着目され、生命の源へと多面的に迫っていきます。
子供のころに読んだ「火の鳥」と近い哲学を感じて、この作品にとても感銘を受けているのだと思います。

後半に進むに従い、宇宙の話がたくさん出てきてふと気付いたのですが、空という少年の名前はむしろ「宇宙(そら)」なのでしょうね。

頭で理解できなくても、海が好きなら共感し感動できる作品

海にふれると、本当に自然の力や命そのものを感じられるんですよね。
これは頭で理解するような体験ではありません。
アングラードのセリフにあるように、頭で理解するのではない、言葉を必要としない世界です。

沖縄の海でのシュノーケリングはとても美しい体験でしたが、実は台風が近づく伊豆の海で泳いだこともあります・・・
このときは波が高くなり、海水に砂が混ざって茶色くなっていたので、視覚的に美しい体験ではありません。
でも自分の背丈より高い波が向かって来たとき、圧倒的な力を感じて言葉もなく感動したのです。

管理人はふだん、室内で音楽の感動ばかりを味わうような生活をしていますから、このときは海のインパクトに自然の偉大さを感じました


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まとめ

今回は、アニメーション映画「海獣の子供」の原作漫画について、無料で試し読みできるサイトやアプリの紹介と、管理人の個人的な感想・考察を書きました。

イタリアでも日本のアニメは人気ですから、きっと公開されるでしょう。
でもイタリア語は文字で書くと長いため、字幕を付ける習慣がないのです。
すべてイタリア語吹き替えになってしまうので、それがネックですね!
しかも余談ですが、「ルカ」という名前、イタリアでは男子の名前なんですよね・・・

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