オペラ歌手やオペラの合唱の仕事はここが大変!

歌うこと
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ヴェネツィアの音楽院に入学してから、若手オペラの舞台で合唱を歌う経験をさせていただいています。

少ないとはいえお金をいただくので、お仕事です。
仕事である以上、文句は言いません!
ですが正直なところ、本当にオペラが好きで「オペラに関わりたい、劇場にいるだけで幸せになれる」という人か、将来オペラ歌手(ソリスト)になりたいから、そのために現場を学びたいという強い意欲がない限り、大変な仕事だと思っていますので、その理由について書きます。

(今回の画像は、フェッラーラ市民劇場の舞台から客席を撮ったものです。リハの時に撮ったので誰もいないボックス席が撮れました。どこかにオペラ座の怪人が隠れていたり・・・はしないか。パリじゃないもんな)

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オペラは拘束時間が長いので、ほかの仕事との両立が難しい

舞台裏に置かれたオペラの小道具

舞台裏に置かれたオペラの小道具

若手オペラ歌手は普通、ほかの仕事(歌やピアノの先生)と、劇場の仕事を両立しています。

オペラの稽古のスケジュールは動かせない

ひとつのオペラ作品を上演するまでには、とても多くの人が関わっています。
オーケストラや指揮者、ソリストに合唱、コレペティ(練習ピアニスト)などの音楽家だけでなく、演出家に舞台監督、舞台装置を動かすスタッフや照明、音響、字幕を回してくれる人、メイクさんや衣装係など、皆で作り上げていくものです。
そのため当然ながら、プローヴァ(練習やリハーサル)のスケジュールに融通が利きません。

イタリアでは前日に集合時間が決まることも

通常のコンサートなら、出演者同士でスケジュールを調節することができます。
たとえば、チェンバロ、歌手、リコーダー奏者の3人で本番をする場合、お互いの仕事の時間を避けてリハーサルの予定を組むことができます。

しかしオペラの場合、手帳にまず書き込むべきはオペラのプローヴァの予定です
イタリアでは、日程は決まっていても集合時間は前日に連絡が来たりするので、基本的に丸一日あけておくことになります。

音楽教室に勤務していると困難

よって、子供のための音楽教室のように毎週時間が決まっている仕事を抱えていると、両立が難しくなります
多くの歌い手が教える仕事をしていると思いますが、毎回のレッスン時に次のレッスンを決めるようなスタイルが理想的です。


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オペラ歌手は体力勝負!?

舞台からオケピと客席を見る

舞台からオケピと客席を見る

管理人は体力にはまあまあ自信があるので、この項目はそんなに苦労しないのですが、観ているだけでは分からないこともあります。

オペラの合唱歌手は演目によっては待ち時間だらけ

オペラ歌手が重労働だというのは、観ているだけでもお分かりいただけると思いますが、合唱なんて作品によってはほとんど出番がないし、ちょこっと出てきて、ちょっと歌って、さっさと引っ込むじゃないかと思われるかも知れません。

実際管理人も合唱の仕事が来たとき、出演する作品のスコアを読んでそう思いました・・・

この演目ならほとんど出番がないから大変な仕事じゃないな

ですが実際やってみると、本番の2時間ぐらい前にはメイクやヘアスタイルのセットを終え、(演出によりますが)重い衣装を着て、上演が終わるまで何時間も過ごさねばなりません。
むしろ舞台に出て緊張感の中、演じつつ歌っていたほうが、待機ばかりの舞台より遥かによいです。

衣装・メイクは無いけれど、オケピで歌う仕事も緊張感たっぷり

なお「黒い服」という服装指定だけで、オーケストラピットで歌う合唱の仕事もありました。
こちらは衣装の締め付けなどはありませんが、ずっとオケピに座っています。
ヨーロッパの馬蹄型の劇場は、3階、4階のボックス席からだとオケピの奥まで丸見えなんですよね・・・
舞台の最中にオケピの合唱歌手たちをオペラグラスで見る観客はいないだろうと思いつつも、やっぱりあくびをしたり、だらっとしていたら感じが悪いじゃないですか。
緊張感の中で座っていたので、それなりに疲れました。

が、隣の席のテノールがずっとスマホでゲームをやっていてびっくりでした・・・
でも彼、いい声で歌うんですよ。
こういう何も考えない奴に限ってうまいってのが声楽か?と思いましたよ(苦笑)

知らない土地へ行くことを楽しめるといいね!

これはオペラ歌手に限ったことではありませんが、今も昔も音楽家は呼ばれたところに旅して行って歌うもの。
ですので様々な土地に出かけることを楽しめる人だと、旅公演が苦ではなくむしろ経費で小旅行ができるラッキーなことになります。

枕が変わっても熟睡できると便利

平日夜のオペラは8時頃開演するので、終演後着替えて劇場を出るのは深夜近くなることもあります。劇場の近くに宿を取ることもしばしば。
リハーサルの段階から泊まることになりますので、旅先でも熟睡できるとストレスが少ないでしょう。
睡眠はどんな良薬よりも声に効果的ですので、睡眠不足のまま本番を迎えるのはつらいです。
ソリストの場合はさらに重要な項目だと思います。

最近は内科などでも睡眠導入剤を処方してもらえるみたいですので、検討するのもありかなと思います。

ちなみに管理人はどこでも熟睡タイプですので、ホテルに泊まることにワクワクしています。


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集団行動に気を遣うタイプだと、無駄なエネルギーを消費してしまう

モーツァルト《フィガロの結婚》合唱歌手の衣装が並ぶ楽屋

モーツァルト《フィガロの結婚》合唱歌手の衣装が並ぶ楽屋

管理人は、折角ホテルのベッドで熟睡できても、大勢の人に囲まれていると神経が休まらず、無駄なエネルギーを使ってしまうタイプです。
「誰とでも仲良くできるタイプ」と言われるので、外からは気を遣うような人間には見えないようなのですが・・・。

合唱歌手はつねに集団行動を取らねばならない

主役級の歌手には、普通個室が与えられますが、劇場のサイズによってはソリスト全員が個室で待機できるわけではありませんし、ましてや合唱は言うに及ばず、数人ずつ集団の楽屋で待機します。
オペラはリハーサルも本番も拘束時間が長いですし、ほかの街に遠征して公演を行う場合、みんなで大型バスに乗って現地に向かい、帰りも一緒にバスで帰ったりします
「地元の駅で待ち合わせね」と近所に住むほかの合唱の子からメールが入ったりすると、午前11頃から深夜まで、ずっと「外側に向けて神経を使うモード」で過ごさなければならず、自分の世界に入り込めるチャンスがほとんどありません。

一人で過ごしたり、3~6人の少人数が心地よいというタイプだと、つねに集団行動を取るコリスタ(合唱歌手)は、歌唱や演技以外でエネルギーを使うことになってしまいます。

まさかこんなことで疲れるとは思っていなかったので、自分で驚きました

あなたは大人数の仲間に囲まれていると疲れてしまうタイプ?

あなたが大人数の仲間に囲まれてリラックスできるタイプかどうかは、子供のころの学校生活を思い返してみることでヒントが得られるかも知れません。
運動会や学芸会、合唱コンクールなどのイベントで、クラスのみんなと心をひとつにしていましたか?
それともみんなで同じ方向を向いて盛り上がることに、疲れを感じてしまうタイプでしたか?

オペラに関わる音楽以外の要素にワクワクするかどうか

コリスタ(合唱)の仕事は特に、音楽の占める割合が少なくなりますので、演技だけでなく演出や衣装などほかの要素に興味を持てると楽しめると思います

合唱は黙役(歌わないけど演技だけする役)も担う

これもやってみるまで自分で知らなかったのですが、こんなに原理主義的に音楽そのものが好きなのかと・・・。

合唱の歌手たちは、歌う場面以外にも舞台に出て行って演技をすることがよくあります。
その際もオーケストラはずっと音楽を演奏しているので、それを聴きながら「チェンバロ弾きたい!」と血管の中がムズムズしてしまいました。

楽屋(大部屋)での待機時間の過ごし方

楽屋での待機時間中は、大好きな和声法の宿題をやって過ごしました。
イタリア人グループはUNOをやって盛り上がっていたので、混ざるべきだったのかも知れませんが、中国人グループはおしゃべりに興じて混ざっていなかったので、自分も外国人なのをいいことに、五線譜に音符を並べていました・・・

新進気鋭の演出を受け入れられる柔軟さが必要

これはコリスタよりも、ソリスタに一層関わることでしょう。

現代のオペラは演出家の時代

バロックオペラの時代からしばらくは歌手の時代でしたが、ヴェルディのころには作曲家の時代となり、プッチーニ亡きあと20世紀には指揮者の時代、そして今は演出家の時代だと言われているように、変なコスチュームや、歌いにくそうな態勢を要求されても、歌手は従わなければなりません。

オペラにも演劇界の新しい演出手法がもたらされることに、眉をひそめるのではなく、おもしろがる柔軟さがあるとよいですね。

特にソリストは新進気鋭の演出を受け入れる必要がある

恥ずかしい衣装に珍妙なメイキャップでも、歌に集中しなければならないソリストには尊敬を感じます。

ちなみに管理人は、特に観客としてオペラを観るとき、古風で美しい演出の舞台を望んでしまいます。


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おわりに やっぱり好きな気持ちが大切!

ここまで色々と「オペラの仕事はここが大変!」と思うことを綴ってきましたが、結論としては、どんなマイナス要素もオペラへの憧れと情熱があれば、ちっぽけなものに感じられるはずです。

でも、自分の「好き」の気持ちがどれほど大きいか、もしくは実際は子供っぽい憧れでしかなかったのかは、音楽大学など現場に近い世界に入ってはじめて気付くかも知れません。
専門的に音楽を学ぶ場所に足を踏み入れない限り、あなたは身の回りの人と比べて、ずば抜けて音楽好きでしょう。
でも例えば音大には、普通音楽に情熱を持った人しか入学してきません。
そこでは、あなたぐらいの情熱を持っていることは当たり前で、上には上がいる可能性があります。

管理人の実体験としては、今まで「音楽が好き」という大きなくくりで捉えていたものが、周りの学生と比べて、どういう部分がより好きなのか、何が自分の強みなのか、ということを明確にできました

というわけで今回は、イタリアの歌劇場の合唱経験から気付いたことを記事にしてみました!

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