夏休み前に受ける予定のチェンバロの期末試験。曲目が決まりました!
今回も簡単な曲解説を書いていきたいと思います。
チェンバロはバロック声楽の副科で2年勉強したあと、現在は本科(学部前準備コース)2年目に在籍中です。
チェンバロに関する記事一覧はこちら
チェンバロ期末試験プログラム
どんな曲を選ばなければいけないか、あらかじめ定められています。
チェンバロ試験の課題曲リスト
日本語訳
下記リストのそれぞれから1作品ずつ含むプログラムを演奏すること(7番目は必修ではない)。
- J.S.バッハ:インベンションとシンフォニア、フランス組曲
- ドメニコ・スカルラッティ:「チェンバロ練習曲集」
- 16~17世紀の作品
- 17~18世紀のイタリアの作曲家
- 17~18世紀のフランスの作曲家
- 17~18世紀のドイツの作曲家
- (弾きたければ)現代の作品、もしくはバロック時代の作品、ほかの楽器との共演など
実際に弾く曲リスト
—– Invenzione No.3, 4, 13 e 14
2) D. Scarlatti : “Essercizi per Gravicembalo”
—– K208 e 209
3) Autori del XVI e XVII secolo
—– Cipriano de Rore “Anchor che col partire”
4) Autori italiani dei sec XVII e XVIII
—– Sonata di Galuppi (in Re minore, Andantino e Presto)
5) Autori francesi dei sec XVII-XVIII
—– Preludio di L. Couperin
6) Autori tedeschi dei sec XVII-XVIII
—– Suite di J.C.Fischer “Musicalischer Parnassus: Melpomene”
7) (facoltativo) – un brano di autore moderno o contemporaneo, o altro brano dal repertorio antico a scelta dello studente anche eventualmente con altri strumenti
—– H. Purcell “Ground”
日本語訳
- バッハのインベンションからNo.3, 4, 13 & 14
- スカルラッティのソナタ K208、K209
- チプリアーノ・デ・ローレのマドリガーレ”Anchor che col’ partire”のインタヴォラトゥーラ
- ガルッピのソナタニ短調
- ルイ・クープランのプレリュード
- J.C.フィッシャーの組曲
- ヘンリー・パーセルの “Ground”
チェンバロ試験で弾く曲を解説
バッハのインベンションからNo.3, 4, 13 & 14
まずはバッハ、バロック音楽に興味がない人でも知っている大作曲家です。ピアノを学ぶときにも必ず通りますが、チェンバロでも必須課題!
ピアノを習った人なら誰でも弾いたであろうインベンション、チェンバロで弾くとどんなところに気を付ければよいか、過去に記事にしています。
参考記事 【チェンバロでバッハ】弾き方がピアノとどう違うかインベンションを例に解説
学校の課題曲リストを読むと「un’opera」と書いてあるので、1曲選べば良いような気がするんだけど、最初に「インベンションNo.3」とだけ書いて先生にメールしたら、
「できればほかの曲も加えましょう」
と言われてしまったので追加しました。
スカルラッティのソナタ K208、K209
ドメニコ・スカルラッティは後期バロック時代の作曲家。父親はナポリ楽派の作曲家アレッサンドロ・スカルラッティです。父のほうはバロック声楽で必須課題。
K208、K209はコンサートなどでも続けて演奏されることも多いソナタ。
K208 イ長調 Andante e cantabile
K208はカンタービレで大変美しい曲。
K208の楽譜はIMSLPからダウンロードできます
>>Keyboard Sonata in A major, K.208 (Scarlatti, Domenico) | IMSLP ペトルッチ楽譜ライブラリー
ゆったりとした曲なので決して難曲ではありません。移り変わる和声の色合いがとても美しい曲なので、ぜひ弾いてみて下さい♪
レッスンのポイント
左手の音をなるべくレガートに聴かせること。
とはいえ、曲の最初の方は同じ音の連打なので難しかったです。
チェンバロの構造は鍵盤を押すと爪が弦をはじき、鍵盤があがると爪が再度弦の下に戻る仕組みです。
そのため爪が弦の下に戻り切らないうちに再度、打鍵しても音が鳴らないんですよね。それを気にしてしっかり鍵盤があがってから弾こうとするとレガートにならないし……という感じで、指に最適な感覚を覚えさせるのに苦労しました。
”フォルテにしたい部分”の前で一呼吸
和声が不協和になる部分は、ピアノならクレッシェンドしたいところです。
筆者はピアノの癖が抜けず、曲がもりあがってくるとつい指に力が入るという問題がありました。
チェンバロは音の強弱はつかないので、ピアノならフォルテに弾くであろう部分の前でわずかに空間をあけることで、次の音を目立たせるテクニックを使います。
K209 イ長調 Allegro
ドメニコ・スカルラッティはスペイン王妃マリア・バルバラにチェンバロを教えていました。マリア・バルバラは優秀な生徒だったため、彼女のためにスカルラッティが作曲したソナタにはけっこう難しいものも……
譜読み段階では簡単だと思ったのですが、レッスンに持っていったらもっとスピードを上げて弾くように言われました。まあAllegroだしな……速く弾くとミスタッチしやすくなって難しい!
ローレのマドリガーレのインタヴォラトゥーラ
インタヴォラトゥーラとは多声音楽(オリジナルは声楽曲)を楽器で演奏できるようにアレンジしたもの。Cantus(カントゥス)のみを声で残して、下3声を楽器にアレンジしたものも。独唱の先駆けとなりました。Cantusとは一番上の声部――のちの時代のソプラノパートですが、音域的にはソプラノよりかなり低めです。
ちなみにこのチプリアーノ・デ・ローレのマドリガーレ、オリジナルはこちら。
ローレは音楽史的にはバロックより前の時代、ルネサンス時代の作曲家です。
ルネサンス・スタイルの4声のマドリガーレですね。
聴いていただくと分かるように、Cantus(声楽の一番高いパート)は最高音がDoのあたりで低めですね。
ガルッピのソナタニ短調
バルダッサーレ・ガルッピは、バロック後期から前古典派にかけて活躍した作曲家です。
ヴェネツィア本島からヴァポレットで40分ぐらいのところにあるブラーノ島の出身です。
ソナタニ短調は1楽章 Andantino と、2楽章 Presto からなっています。
スカルラッティのソナタK208と並んで、今回の試験プログラムの中でとても好きな曲です。個人的にはスカルラッティより弾きやすいと感じる曲が多いかな……ガルッピ、、、好き!
ガルッピには美しい曲がたくさんあります。去年のチェンバロ試験で弾いたヘ長調のソナタも前半のラルゴの部分が珠玉の美しさ!
ルイ・クープランのプレリュード
フランス・バロックの作曲家、ルイ・クープラン。有名なフランソワ・クープランは甥にあたります。
このフランススタイルのプレリュードの楽譜にはリズムが書かれていません。小節線もなし。イタリアの音楽院では「Preludio non misurato(プレルーディオ・ノン・ミズラート)」と習いました。日本ではフランス語で「プレリュード・ノン・ムジュレ」と言っているみたい。
(楽譜は、Pièces de clavecin (Couperin, Louis) | IMSLP ペトルッチ楽譜ライブラリー より)
リズムは基本的に奏者の自由なので、時代のスタイルを理解した解釈と表現が求められます。
フィッシャーの組曲「音楽のパルナッソス山 – メルポメネ」
フィッシャーはバロック時代中期~後期にかけて活躍したドイツの作曲家。
下記のCD、フィッシャーのチェンバロ組曲集の録音では、19曲目から28曲目までが「メルポメネ」です。
ドイツのバロック音楽はイタリアのものと似ています。多少、和声が重いかな? イタリアの音楽の方がメロディアスかな? という違いはあるものの、フランスのように特徴的ではないので弾きやすいです。
パーセルの “Ground”
最後はイギリスのバロック音楽作曲家といえばこの人、ヘンリー・パーセル。
レッスンのポイント
左手を一定に保って淡々と弾きながら、右手は旋律を歌うようにというのが難しかったです。右手をメロディアスにすると左がつられるんです……
右手の旋律にはアーティキュレーションをつけ、歌で言うブレスをとるような弾き方をします。でもその間も左手はつねに同じリズムで。
また左手の旋律は、バスとテノールの2声であることを意識して弾くように言われました。
曲の頭から最後まで同じことを同じようにやればよいだけなんですが、右手の旋律の難易度によって意識が左手から去るので、左手だけ寝ていても弾けるまで練習する必要がありますね!
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